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微生物燃料電池のDIYやってみた〜その12〜

微生物燃料電池で小型冷却ファンを回すマイプロジェクトを実行中である。

前回は、作成した微生物燃料電池32個すべてを使って、小型冷却ファンを約37秒間回すことができた。まずは一つの目標を達成することができたが、引き続き電池セルの性能アップについて実験をしてみようと思う。

性能アップのためにやろうとしていることは、米ぬか投入である。

なぜ、米ぬか?

それは自然農からヒントを得ている。米ぬかを畑の表土に撒くと、乳酸菌、酵母菌、納豆菌などの有用な微生物が米ぬかを餌に増え、草の発酵分解が促進されるという。ならば、発電に関わる微生物も米ぬかを餌に増殖し、結果、電流発生量が増えるのではないかと考えられるからだ。

現状の性能を測る

米ぬかを投入する前と後でどれほど性能が変化したかを見たいと思うので、まず米ぬか投入前の性能を測定しておこうと思う。

測定するのは、電池セル4つ(No.33からNo.36)。それぞれ、開放電圧および2kΩ、1kΩ、680Ω抵抗接続時の電圧の計4種類を測定した。電流については、接続抵抗が分かっていることから、オームの法則により算出した(電流=電圧÷抵抗)

上のグラフが、測定結果から作成したI-V特性となる。各折れ線の点が測定ポイントであり、左から開放時、2kΩ接続時、1kΩ接続時、680Ω接続時となる。以前測定した電池セルでは、2kΩ抵抗接続時の電圧が、高いもので540mV程度であったが、今回のものは4つのうち3つがそれより高い値を示していた。あくまでも推測であるが、時間が経過したことにより、アノード電極周辺の電流伝達ネットワーク構造(電極に直接接する微生物だけでなく、電極から離れた微生物も酸化鉄を通じて電極と接することができる構造)がより整ってきたということもあるかもしれない。

さて、どれくらいの時間をおけば効果がみられるだろうか。畑に撒いた米ぬかは、温かい時期であれば2週間程で分解されることを考えると、やはり1~2週間の期間をみなければいけないかもしれない。この間、微生物の繁殖を促進する意味を期待して、負荷を接続し、少量の電流を定常的に流しつつ、定期的な測定で様子を伺ってみようと思う。

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その11〜

微生物燃料電池で小型冷却ファンを回すマイプロジェクトを実行中である。

前回は、作成した微生物燃料電池32個すべてを使って、4個直列x8組の電池でLEDランプを点灯させ、そしてさらに、2個直列x16組の電池へ1kΩ抵抗をつないで電圧・電流を測定した。

今回は、本プロジェクトの目的でもある小型冷却ファンを回す実験をしたいと思う。

とその前に、2個直列x16組の電池へ1kΩ抵抗をつないだ時における、電池1組それぞれから出力される電流について測定してみる。

2個直列x16組の電池で1kΩ抵抗をつなぐ

構成

結果

1組の電池を構成するセル1、セル2の電圧、および1組の電池から出力される電流について、16組分の測定値を示す。

セル1とセル2の足し算はおよそ0.83Vになっており、抵抗端の電圧と一致する。セル1とセル2の電圧は0.3~0.5Vの間でばらつきがあることがわかった。

また、1組の電池から出力される電流についてであるが、均等に電流が流れていると予想したが、電流についても0~0.2mAとばらつきがみられた。組No.2とNo.3については0mAを示したが、電流計のレンジをμAのレンジで測定すると、2μA、15μAとわずかな電流が流れるのみであった。

組No. 電圧(セル1) [V] 電圧 (セル2)[V] 電流 [mA]
1 0.467 0.366 0.03
2 0.428 0.405 0.05
3 0.343 0.491 0
4 0.298 0.531 0
5 0.427 0.406 0.09
6 0.450 0.383 0.17
7 0.440 0.392 0.07
8 0.303 0.530 0.08
9 0.409 0.425 0.11
10 0.485 0.375 0.20
11 0.541 0.290 0.07
12 0.417 0.415 0.14
13 0.461 0.370 0.06
14 0.455 0.375 0.14
15 0.405 0.427 0.08
16 0.335 0.497 0.16

この電流のばらつきの原因は、電池の内部抵抗が関係していると思われるが、今後理由について考察してみたいと思う。

2個直列x16組の電池で小型冷却ファンを回す

さて、次はいよいよ小型冷却ファンを回す実験だ。

構成

まず、実験構成としては、前回に引き続き、2個直列x16組の電池を使いたいと思う。ファンを回すのに必要な電圧は、およそ0.8V、電流は10mAだ。0.8Vを得るために、電池2つを直列にしている。

総数32個の電池を使っても、間違いなく電流が不足すると思われるが、小型冷却ファンを接続して、最初の数秒間だけでも動く可能性があるので、試したいと思う。

結果

遂に回った。まずは動画で確認いただきたい。

負荷接続前の開放電圧は1.13V。

負荷接続直後、ファンが回転し、電圧計(右)と電流計(左)の値は、電圧0.8V、電流12mAを示したのが確認できた。その後、電圧と電流は下がり続けたが、ファンは約37秒ほど回転し、停止、活動限界を迎えた。

停止した時の電圧と電流は、0.58V/11mA。

遂にマイプロジェクトの目的をどうにか達成することができた。

しかし、回転したのはたったの約37秒。やはりずっと回り続けてほしいところだ。そのためには、電池セルを増やすことや電池セルの性能アップが必要である。

引き続き電池セルの性能アップについて実験していきたいと思う。

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その10〜

微生物燃料電池で小型冷却ファンを回すマイプロジェクトを実行中である。

前回は、微生物燃料電池を8個(4個直列x2組)使って、ろうそく風のLEDランプを点灯することができた。しかし、数日経ってみると、電圧と電流は1.7V/0.1mAを切り、僅かな灯火となってしまった。やはり電流が不足しているようであった。そこで、現状ある電池全てを使って新たに実験をしたいと思う。

電池4個直列x8組にLEDランプをつなぐ

構成

結果

LEDランプ接続直後の様子

順調にLEDランプは点灯した。LEDランプに流れる電流は、接続直後、0.32mAが流れ、写真のような明るさを出していたが、徐々に電流は減っていき、2日目以降の計測値では、0.22mAで安定した。数日間の電圧と電流を測定結果を以下に示す。

日数 電圧 [V] 電流 [mA]
0 1.83 0.32
1 1.79 0.18
2 1.80 0.22
3 1.79 0.22

日数=0: 負荷接続直後

電池4個直列を並列に8組入れたので、電流不足はある程度改善されたようだ。過電圧(電池内部抵抗による電圧降下)が抑えられ、電流についても以前(4個直列x2組)より増えていることが確認できた。

ゆらめき輝くLEDランプが、お好きなお庭のライトアップに一役買うことができるかもしれない。

電池2個直列x16組に抵抗(1kΩ)をつなぐ

次は本プロジェクトの目的でもある、小型冷却ファンを回すための構成に近い形で実験したいと思う。ファンを回すのに必要な電圧は0.8V、電流は10mAだ。0.8Vを得るには、電池2つを直列にすれば良さそうである。そして、10mAの電流を得るにはまだ電池が足りないと思われるが、今ある全ての電池を使って、2個直列x16組の電池を構成した。この電池に抵抗をつないで電圧/電流の様子を一度確認しておこうと思う。つなぐ抵抗は、計算がしやすいように1kΩとした。

構成

結果

数日間の電圧と電流を測定結果を以下に示す。電圧で電流は少しづつ下がってきたが、3日目では、電圧0.826V、電流0.82mAとなった。

日数 電圧 [V] 電流 [mA]
0 1.018 1.01
1 0.917 0.91
2 0.855 0.85
3 0.826 0.82

日数=0: 負荷接続直後

負荷接続直後の電流が1.01mAであったことから、10mAの電流を流すには、抵抗を1kΩから10Ωにしないといけない計算になるが、間違いなく電流が不足して、電圧が急激に下がると思われる。しかし、小型冷却ファンを接続して、最初の数秒間だけでも動く可能性もあるので、次回試してみたいと思う。

一方で、負荷に流れる電流だけでなく、それぞれの電池1組から出力される電流についても測定し、全体の状態を把握することもやってみたいと思う。

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その9〜

微生物燃料電池で小型冷却ファンを回すマイプロジェクトを実行中である。

前回は、電池のI-V特性を測定した結果、性能の良いセルを104個用意すれば小型冷却ファン(13mA/0.8V)を動作できそうだという予測がついた。しかし、104個はさすがに数が多いので、セルの性能をアップする事を課題に設定した。

性能アップの鍵⁉︎

そこで研究論文を調べた結果、ナノサイズの酸化鉄コロイド を発電に関わる細菌であるShewanella と共に加えると電流値が50倍以上になる結果を得たという論文があった。私が使用している堆積物の中に、このShewanellaがいるかどうかは不明であるが、いるという前提で、酸化鉄(α-Fe2O3 )ナノコロイドをアノード電極の周りに加えたいと思う。

で、酸化鉄(α-Fe2O3)と言えば、ラスコーの壁画で彩色に用いられたベンガラという赤色顔料と同じ成分であるというが、今回欲しいのは、粒子の大きさがナノサイズのものだ。岡山大学の研究室でナノサイズのベンガラを開発した記事を見たが、残念ながら気軽に購入できる代物ではなさそうであった。そこで天然の酸化鉄(α-Fe2O3)を採取することを調べてみた。

水田や流れのない小川の表面にできる茶褐色の被膜を見た事があるだろうか。被膜の成分には、α-Fe2O3が含まれるという報告もあるので、これがナノサイズであったら都合が良い話である。

という事で、先日さいたま市の市境にあるびん沼川のヘドロと被膜を含む水を採取しておいたので、これらを使って、微生物燃料電池を作ってみた。

アノード電極、カソード電極にグラファイトフェルトを使った電池を今回新たに8個(電池No.25~No.32)作成した。使った土は、びん沼川で採取したヘドロと被膜を含む水だ。写真のように、ペットボトルに採取した時点で、茶褐色の被膜は見えなくなっていた。

動作確認

これらの電池の解放電圧(mV)を1週間測定した。

日数 電池25 電池26 電池27 電池28 電池29 電池30 電池31 電池32
1 283 142 164 117 124 118 247 121
2 408 295 339 297 334 325 370 323
3 484 384 445 394 456 418 438 442
4 550 493 560 495 634 518 509 558
5 604 559 697 568 744 624 575 715
6 714 625 771 641 814 742 657 806
7 791 732 829 755 832 807 768 841

約一週間経過して、各電池とも開放電圧が732mVから841mVの値を示した。その後、No.27とNo.29のI-V特性を測定した。

No.27 12/7とNo.29 12/7の折れ線は、電池作成後、約1週間後のものだ。以前測定したNo.17の性能とあまり変わらないものであった。

そこで、電流を流すことで、微生物活性の向上を狙い、電池4つを直列にして10kΩ抵抗を接続することにした。一つ目(①)は、電池No.25からNo.28の組み合わせ、二つ目(②)はNo.29からNo.32の組み合わせ。4日経過して①および②の負荷電圧を測定すると730mV、1055mVであった。①に負荷電圧が随分小さくなっていたので電池毎の電圧を測定すると、なんとNo.26の出力電圧がマイナス325mVを示していた。理由はわからないが、意図しない事象になってしまった。この事象の理由は、後々検討したいと思う。

電池25 電池26 電池27 電池28 電池29 電池30 電池31 電池32
386 -325 347 316 325 166 293 267

その後、開放状態で放置すること10日。マイナスに振れていたNo.26の電圧は既にプラスに転じていた。再度No.27、No.29のI-V特性を測定したものが、No.27 12/24、No.29 12/24の折れ線である。I-V特性はNo.27 12/7とNo.29 12/7より良くなっていることがグラフから読み取れる。負荷を接続し電流を流すことは、性能向上の一因になったと思われる。

ただ、この性能は、アノードに炙ったステンレス網を使用したNo.7、No.8の結果と大差がないので、さらなる性能向上に挑戦したいと思う。

LEDランプの点灯

せっかくなので、今回作った微生物燃料電池を8個(4個直列x2組)使って、ろうそく風のLEDランプを点灯してみた。ろうそく風なので、明るさが揺らぎ、良い雰囲気が出る。ランプ内にはボタン型のニッケル水素電池が2つ直列になった、2.4V 80mAhの電池が入っていたが、この泥電池でもLEDランプを点灯することができた。負荷接続直後は、負荷電圧/電流が1.8V/1000μA程あったが、電流が少しづつ弱まってきて、一晩経ってみると、1.7V/200μAを切り、僅かな灯火となっていた。もう少し電池を足し、電流を増やしてあげれば、夜のライトアップに使える明るさになると期待している。

写真は負荷接続直後のランプの様子

参考:生きている電流発生菌Shewanellaの電気化学ー 外膜チトクローム c を経由する細胞外電子移動 ー

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その8〜

微生物燃料電池で小型冷却ファンを回すマイプロジェクトを実行中である。前回は、8個の電池を追加して全16個の電池を使って、100Ω抵抗に流れる電流と電圧を測定したが、ファンを回すには程遠い結果であった。電流が増えると電池内部の過電圧により、出力電圧が下がってしまうことがあるため、この先いくつ電池を作れば良いのかわからない状態となっている。そこで、もっと先にやるべきであったが、電池の電流−電圧(I−V)特性を測ってみることにした。I -V特性とは電池の出力電流に対する出力電圧を示すもので、電池の性能を測るのに使われている。

電極の組み合わせ

電池は現在、次の3種類の組み合わせがある。No.1の組み合わせが4個、No.2の組み合わせが4個、No.3の組み合わせが12個だ。その中から、2つをピックアップしてI -V特性を測定した。

No. アノード カソード 電池No.
1 炙ったステンレス網 グラファイトフェルト 8, 7
2 炙ったステンレス網 ステンレス網 10, 11
3 グラファイトフェルト グラファイトフェルト 16, 17

測定方法

測定方法としては、可変抵抗器があれば良いのだが、そんなものはないので、5種類の抵抗を変えて行った。(10kΩ、2kΩ(1kΩ2個使い)、1kΩ、680Ω、100Ω)測定は、値がある程度安定するまで待ってから行った。

結果

電池No.8/10/16の結果

電池No.7/11/17の結果

カソードにステンレス網を使った電池No.10や11は、他に比べると過電圧が大きく、50μAも電流が流れると大きく電圧が低下していた。この状態だと、ちょっと使い物にならない気がする。

また、アノードに炙ったステンレス網を使った電池No.8や7は、アノードがグラファイトフェルトの電池No.16や17と比べて、同じ電流値でより高い電圧を示した。

アノード電極の違いが一つの要因であろう。それともう一つは、泥の違いもあるかもしれない。電池No.4から8は、初期に制作したもので、自転車のスポークについた赤錆を削ぎとったものを入れた経緯がある。微生物燃料電池の論文で酸化鉄ナノコロイドをアノード電極にふりかけることで、電流密度の増加が認められるという話があったので、泥に赤錆が多めの状態になっていたと思われる。そのため、性能に差が生じた可能性もある。

さて、次の手はどうしようか。

電池No.7では、250μA/0.5Vの出力得られたので、もし同じ性能のものがいくつもあった場合、13mA/0.8Vを得るのに、104個の電池が必要な計算だ。(2個直列のセットを52個)

ちょっと104個を作るのは現実的でない。それに同じ性能のものをたくさん作れるかも怪しい。なので、もっと電池一つの性能をあげるのを優先しようと思う。まずは、赤錆添加を試していこうと思う。

続く。

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その7〜

微生物燃料電池で小型冷却ファンを回すマイプロジェクトを実行中である。今回は、8個の電池をまとめて作ったのでレポートしておこうと思う。

電極について

先日、Aliexpressでグラファイトフェルトをまとめ買いしたので、アノード電極とカソード電極の両方に、グラファイトフェルトを採用した。

採用の理由はもう一つある。

これまで、アノード電極用に、100円ショップで購入できる、ステンレスあく取り網を使っていたが、私が通っているダイソーさんではとうとう商品が入れ替わってしまっていた。薄々感じてはいたが、やはり商品の入れ替わりが早い。そして、代品においては、残念ながら電極には不向きな感じであった。身近な材料で作るという狙いがあったのだが、今後は材料が安定して購入できそうなグラファイトフェルトの採用に寄せていこうと思う。また、グラファイトフェルトの方が、電極としての下準備も少なく、コストもあまり変わらないので、むしろ良いのかもしれない。

堆積汚泥(ヘドロ)の採取

堆積汚泥を採取しようと思い、新河岸川水系のとある小川へ。水はきれいなのであるが、ヘドロが20cm以上溜まっている。この川底のヘドロを網ですくって採取した。

材料

  • 容器
  • グラファイトフェルト(3x100x100mm)
  • ステンレス針金(φ0.9 mm)
    カソード用:230mm、アノード側:190mm
  • 熱収縮チューブ(60㎜)

手順

1. アノード電極用として、グラファイトフェルトにステンレス針金を対角線に挿して折り曲げる。(長さは容器の外に線を出せる長さで)

2. 絶縁のため、熱収縮チューブを通し、熱を加えて収縮させる。(今回使ったチューブはサイズが合っていないため締まっていない)

3. カソード電極用としても、グラファイトフェルトにステンレス針金を対角線に挿して折り曲げる。(長さは容器の外に線を出せる長さで)

4. 容器の側面上部に導線を通す穴を開ける。

5. 容器にヘドロを入れる。約1.5cm。

6. アノード電極を設置して、針金を容器の穴に通す。

7. さらにアノード電極の上にヘドロを入れる。約3-4cm。

8. カソード電極を設置して、針金を容器の穴に通す。

手順は以上。

同じものを作ること全部で8個。手順もシンプルになり、作るのも手慣れてきた感じだ。

動作確認

これらの電池の解放電圧(mV)を1週間測定した。

日数 電池13 電池14 電池15 電池16 電池17 電池18 電池19 電池20
0 202 255 160 199 58 199 170 109
1 312 345 266 334 163 320 303 298
2 335 366 286 351 270 338 326 347
3 477 565 420 620 501 477 437 484
4 564 658 492 716 658 633 530 544
5 651 629 483 670 688 666 650 625
6 726 675 647 716 697 721 712 707
7 728 675 677 707 686 724 672 736

1週間程経過して電池が育ってきた感じだ。

ここで、これまで作ってきた電池No.5からNo.20の計16個の電池を二つペア(直列)にして、8個の電池とし、これらを並列接続してみた。

この時の解放電圧は、1063mV。その後、100Ωの抵抗を接続し、30分ほど経った後電流を測定すると、2.07mAであった。計算上の抵抗両端の電圧は、207mVになる。電流が増えるにつれ内部抵抗が増えるようだが、電圧がここまで下がってしまった。

さらに電池を作る必要がありそうだが、個々の電池をいくつ直列にするかでも結果が違ってきそうなので、そのあたりも試してみようと思う。

まだ先が長そうだ。

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その6〜

微生物燃料電池で小型モーターを回す計画を前回立てたが、電池をもっと増産していかないといけない事がわかった。そこで、微生物燃料電池の増産を少しづつ始めたのでリポートしておきたいと思う。

微生物燃料電池の増産(電池No.9-12)

電極の組み合わせは、アノード電極に炙ったステンレス網、カソード電極に、ステンレス網(炙っていないステンレス網)を採用した。

電池No. アノード カソード
9 炙ったステンレス網 ステンレス網
10 炙ったステンレス網 ステンレス網
11 炙ったステンレス網 ステンレス網
12 炙ったステンレス網 ステンレス網

各電池の開放電圧(mV)の日数変化を以下に示す。

日数 電池9 電池10 電池11 電池12
0 349 370 387 327
1 408 408 432 412
2 576 533 626 610
3 656 631 690 651
4 733 674 760 685
5 740 639 768 681
6 727 664 766 695

思ったより開放電圧が上昇しなかったが、もしかしたら、グラファイトフェルトをカソード電極に使用した時との差が発生しているのかもしれない。もしくは、10月になり気温が下がってきたことによるのだろうか。

その後、負荷を接続してみることにした。電池No.9からNo.12を直列につなぎ、1kΩ抵抗とLEDを接続し、電流を流した。およそ1日経過した後の負荷両端の電圧は2.02Vを示し、その後は1.73V程度に安定し、2週間以上点灯を続けている。

前回作った微生物燃料電池の長期モニタリング

一方で、前回作った電池No.5-No.8の解放電圧も測定を続けた。次の表は各電池の開放電圧(mV)の日数変化を示す。21日目までの結果は、前回の結果を再掲している。

解放電圧45日目にはNo.6の開放電圧が459mVまで下がった。この時、泥が乾燥してきた可能性を疑い、No.5-No.8の電池へ少し水を加えてみた。その結果、50日目にはNo.6の開放電圧は799mVに回復した。しかしその後、61日目には146mVにまで下がってしまった。

日数 電池5 電池6 電池7 電池8
0 583 627 612 594
1 739 794 772 770
2 759 804 779 785
21 872 846 834 816
45 624 459 743 757
50 859 799 828 831
61 846 146 849 794

このように開放電圧が低下する理由として、少しずつ泥が乾燥してきたことが関係しているように思われたので、泥の乾き具合を確認し、湿り気をリセットすることにした。

各電池の泥を一旦取り出してみると、やはり初期の状態に比べると乾燥しているようだった。

上の写真は、電池を作る前の初期の泥の状態であるが、これと比べるとその差は明らかだ。

水を加え、練り直した泥を、電池へ再び充填した。

湿り気をリセットした後の各電池の開放電圧(mV)の日数変化を以下に示す。

日数 電池5 電池6 電池7 電池8
0 531 366 345 541
1 552 466 479 707
2 562 538 530 741
3 591 555 574 750
5 611 567 599 679

電池の解放電圧は、回復の兆しを示したようだ。やはり、時間の経過に伴い解放電圧が低下してくる現象は、泥が乾燥してくることが関係していると言えそうだ。

解放電圧の低下をさせないために、水分の蒸発を抑える工夫が必要かもしれない。ただ、カソード電極での反応では酸素が必要なので、通気性の確保も同時に考慮しないといけないだろう。

失敗から新たに学んだことを活かし、さらに電池の増産に励もうと思う。

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その5〜

微生物燃料電池について、新たな実験を始めたのでリポートしたいと思う。新たな実験の目標は、微生物燃料電池で超小型の冷却ファンを回すことだ。もしファンが回れば、きっとエコな涼しい風に当たれるはずである。

ということで、前回までに作った微生物燃料電池の部品を一度ばらし、新しい微生物燃料電池を4つ作ることとした。電極の組み合わせは、安定して起電力が発生していた、炙ったステンレス網とグラファイトフェルトの組み合わせを採用した。

電池No. アノード カソード
5 炙ったステンレス網 グラファイトフェルト
6 炙ったステンレス網 グラファイトフェルト
7 炙ったステンレス網 グラファイトフェルト
8 炙ったステンレス網 グラファイトフェルト

 

電極作り6〜グラファイトフェルト(改)〜

これまでの実験で使用してきたグラファイトフェルトの電極であるが、1月以上経過し、遂に不具合が生じてきた。

グラファイトフェルトに挿していた銅線部分が腐食によって断線してしまったのだ。

さらには、電線は細い複数の銅線でできているため、毛細管現象によって電線が水を吸ってしまい、電線を通して、容器の外に水滴がポタっと滴れる事態も発生してしまった。

このタイプの電線では、長時間の運用には向いていなかったようだ。

そこで、今回使用したのは、ステンレスの針金だ。これも100円ショップで売っていたものだ。ステンレスなので、錆びないし、細い銅線の集まりではなく、一本の線なので、毛細管現象も起きないはずだ。半田付けの手間も掛からないし、ただグラファイトフェルトに針金を差し込むだけというところも良い点だ。

材料

グラファイトフェルト(3x100x100mm)
ステンレス針金(φ0.9 x130mm)

手順
  1. ステンレス針金をグラファイトフェルトへ差し込む。

使う土

前回までの実験では、使う土が実験によって違ってしまったこともあったので、条件を一定にするため、これまで使った土を混ぜて、均一化した土を用意した。プラ舟田んぼの土、田んぼの土、川底のヘドロのスペシャルブレンド土を使用した。

組み立て後の様子

組み立てに関しては、以前の記事が参考になる。注意点としては、グラファイトフェルトがアノード電極の電線に接近していたので、絶縁のために、電線付近(上写真の左下)に食品ラップを少しだけ間に挟んだ。

実験結果

各微生物燃料電池の解放電圧(mV)の日数変化を以下に示す。

日数 電池5 電池6 電池7 電池8
0 239 212 150 445
1 511 724 532 659
2 727 831 783 773
3 738 837 795 787

3日経過後の状態で、電池4つを直列につなぎ10kΩ抵抗を接続した。そのときの、抵抗両端の電圧は1.48V、電流は0.15mAであった。

その後、抵抗を外し、各電池の開放電圧(mV)の日数変化を計測した。途中、旅行で留守にしたこともあり、計測ができなかった時もあるが、気づいたら20日以上計測を続けることになった。21日目の各電池の開放電圧は800mVを超える値となり、合計で3.43Vとなった。なかなか良い出来に仕上がったと思う。

日数 電池5 電池6 電池7 電池8
0 583 627 612 594
1 739 794 772 770
2 759 804 779 785
3 738 837 795 787
21 872 846 834 876

超小型冷却ファン

微生物燃料電池の出力電力はとても小さいので、できるだけ消費電力の小さい、超小型冷却ファンを探した結果、秋月電子通商のDC超小型冷却ファンを購入した。

秋月電子通商 DC超小型冷却ファン 0.8~2V 17mm角型

  • 消費電流:25mA(@2V)、13mA(@0.8V)

0.8Vから動作し、0.8V時の消費電流が13mAなので、微生物燃料電池を複数用意すれば、なんとか動作できるのではと思っている。

ちなみに、電池5~電池8を並列につなぎ、このファンを接続したが、もちろん回らない。ファンにかかる電圧と電流は、分極現象により電圧が下がり、約340mV、約2.7mAであった。

今回作った同じセットを、もっとたくさん作らないといけないかもしれない。

こりゃぁ、大変だ。

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その4〜

前回では、炙ったステンレス網とグラファイトフェルトを使った電極の組み合わせによって、それぞれどれ程の電圧が出るのかを試した。4つの微生物燃料電池を作り、1つは900mV、2つは700mV以上の電圧が発生し、まずまずの結果を得ることができた。

今回は、いよいよ、これらを直列につないで、LEDを点灯しようと思う。

一般的な赤色のLEDでは、順電圧が2V程度で、LEDが点灯できるので、既に十分な電圧ではないかと予想している。

LEDの点灯

これまで作った微生物燃料電池4つを直列に繋ぎ、その電圧を測ったところ約2.7Vが確認できた。その後、10kΩの抵抗、LEDを直列に繋ぎ回路を組んだところ、めでたくLEDを点灯することができた。

構想から約二ヶ月もかかっただけに、このLEDの光は、どんなクリスマスのライトアップよりも感慨深い。

さて、この時の電池電圧は、2155mV。負荷を繋ぐ事で、解放電圧から500mV以上下がった。この状態で一晩(8時間)経った後は、2092mV。少しづつ電圧が落ちているがまだまだ点灯している。

10kΩ抵抗の両端の電圧は、404mVが測定できたので、この回路に流れる電流は、計算上約40μAになる。

2日ほど連続運転させたが、電圧約2Vを保ちLEDは点灯を続けている。しばらくの間は、このまま点灯を続けそうだ。

壁掛け時計を動かす

さて次は、壁掛け時計を動かしてみたいと思う。

と、その前に、それぞれの微生物燃料電池の解放電圧(mV)を計っておこう。

電池1(実験1) 電池2(実験2) 電池3(実験3) 電池4(実験4)
509 740 421 793

電池1はこれまで900mVの電圧があったが、LEDの点灯で状態が変わってしまったようで、電圧が509mVにまで下がってしまった。しかしそれでも直列につないだ合計は約2.4Vある。通常は1.5Vで動作する時計に2.4Vを入れて大丈夫?と思うが、負荷を繋ぐと電圧が下がるので、この電圧でまずやってみた。

洗面所に、単三電池一本で動作する壁掛け時計があったので、これを拝借した。(無印良品のもの)。その結果、見事、時計が動くのが確認できた。

負荷接続時の電池電圧は1406mVであった。約2時間後、1362mVにまで下がったので、時計が止まるのも時間の問題か?と思ったが、約12時間後の電圧は1448mVで、時計も順調に動いていた。

その後も連続運転を続けたかったが、「洗面所の時計が消えた」という我が家の事件を解決すべく、この実験はここで終了とした。

さて、ここまでで来たので、次の目標を考えたいと思う。同じものを量産して、スマホが充電できるようにするとか、よりコンパクトになる構造を試すとか、いくつか考えられる。

何か報告できるようになったらまたお伝えしたいと思う。

微生物燃料電池のDIYやってみた〜その3〜

前回は、ステンレス網を炙って表面を酸化鉄に変化させた電極を作って実験を行なった。今回は、教育用に市販されている微生物燃料電池キット(MudWatt)でも、電極として使われているグラファイトフェルトを試してみたいと思う。グラファイトとは鉛筆の芯に使われている黒鉛のことで、炭素原子「C」の結晶の一つ。つまり、グラファイトフェルトは、黒鉛化した炭素繊維で作ったフェルトのことだ。

グラファイトフェルト選びで注意したポイントは電気抵抗率。フェルトの抵抗が高いとその分、電圧降下が発生するので、取り出せる電力のロストなるからだ。

ネットで購入できそうなところは、それほど多くはなかったが、購入したのがこちら。PANCF3100100 (Hi-Tech Carbon Co.,Limited)

スペック上は、電気抵抗率は 0.18-0.22 ohm・cmであり、十分小さいと思われる。

炭素含有量については、Carbon content: 97%と記載されていた。似たような他の商品では、炭素含有量が99%とより高いものもあるのだが、その違いによる影響が見えなかったので、まずはこれでやってみようと思う。

ちなみに、商品は、AliExpressで購入し、送料無料でリーズナブルなのは良かったが、中国からの輸入になるので、商品の注文から到着まで三週間以上かかりずいぶん待たされた印象だった。ここで買うときは時間と心のゆとりが必要かもしれない。

では、レッツDIY!

っと、その前に。実は前回までに電極に使っていた細い電線であるが、やはり細すぎて、ちょっと引っ張っただけで切れてしまった。電圧測定の際に、測定値が不安定であったため接触不良を疑い、電線を触っていたら、あっけなく切れてしまったのだ。なので、より太くしっかりとした電線を使用することとした。

また今回、新たにグラファイトフェルトを入手したので、炙ったステンレス網の電極とも比べてみたいと思う。

実験について

アノード(負極)とカソード(正極)に使う電極の組み合わせによって次の3つを比較する。ただ、比較と言っても、あまり計画的に事を進めてこなかったので、実験で使う土を同じ条件にそろえて比較することができなかった。実験をするたびに、土が足りずに、別の土を使ってしまった。なので、今回は、電極によってざっくりどんな実力があるのかを確認したいと思う。

実験No. アノード カソード
1 炙ったステンレス網 グラファイトフェルト プラ船の田んぼの土
2 グラファイトフェルト グラファイトフェルト 川底のヘドロ
3 炙ったステンレス網 炙ったステンレス網 田んぼの土

アノードにグラファイトフェルト、カソードに炙ったステンレス網という組み合わせもあるが、炙ったステンレス網は電流発生菌を集めやすいというアノード電極向けの意味合いが強いので実験では割愛した。その代り、一番期待をしているNo.1の電極での結果に再現性があるのか見たかったので、No.4の実験として、No.1と同じ電極の組み合わせをもう一つ作ってみることにした。

実験No. アノード カソード
4 炙ったステンレス網 グラファイトフェルト 川底のヘドロ

 

ちなみに川底のヘドロは、さいたま市の深作川という小川から採取したものだ。上の写真の場所では、農業排水が注ぎ込んでおり、ヘドロが程よく堆積していた。臭いは、はっきり言って臭い。

ゆくゆくは、こうした場所で微生物燃料電池を利用して、ヘドロの分解を促進し、水質浄化に繋げていきたいと思う。

電極作り3〜炙ったステンレス網(改1)〜

材料
  • ステンレスの網(アク取り)
  • 電線(φ3 x250mm)
  • 針金
手順

1. 前回の電極作り2で行った手順と同じだが、電線だけより太い電線に変更する。

2. 針金によって電線をステンレス網に固定する。

以上

電極作り4〜グラファイトフェルト〜

材料
  • グラファイトフェルト(3x100x100mm)
  • 電線(φ3 x250mm)
手順

1. 導線の被覆を約9cm剥き、中の銅線を半分に分ける。(一辺が10cmのフェルトに刺すので、それより短かめとした)

2. それぞれの銅線を縒って、銅線にはんだを馴染ませる。

3. はんだを付けた部分をフェルトに差し込む。(線がフェルトから出ないように慎重に差し込む。)

以上

電極作り5〜炙りステンレス網(改2)〜

新たにステンレス網(アク取り)を購入するために、別の100円ショップに行ったら、取っ手の棒がメッシュを囲うように繋がっているものを発見した。これであれば、取っ手が電線の替わりなりそうである。電線をメッシュ部分に取り付ける手間や、接続箇所の接触不良の心配が減るので、これも使ってみることにした。

材料
  • ステンレスの網(アク取り)
手順

1. 容器の中にステンレス網が収まった状態の時に、取っ手の棒が端子として容器の外へ取り出せるように、取っ手の棒をカットして、先端部分は曲げる。

2.メッシュ部分とその枠をガスコンロの火で炙る。全体的に飴色になれば良い。

棒の部分が剥き出しだと、ショートしたりして良くないので、容器の外に出る部分は、端子となる先端を除いてビニールテープ等を巻いた方が良いだろう。

念のため、電極作り3で作った電極と今回作った電極についての電線を含めた内部抵抗を測ってみた。どちらも1Ωより十分小さい値を示していたので、電気的特性にほとんど差はないとみている。

以上

実験結果

次の表は、各実験で測定した解放電圧(mV)が日数の経過でどう変化したかを示す。(日数0は作った直後を示す。)

日数 実験1 実験2 実験3 実験4
0 279 46 309 444
1 441 504 369 376
2 795 718 335 425
3 878 740 200 680
4 894 773 416 727
5 905 796 188 762

実験1での結果は、5日目で905mVに達し、かなりいい感じになってきた。電極作りの参考にした動画の結果では、830mVであったので、電圧ではそれを上回る結果がでた。

実験2、実験4では、実験1の結果には及んでいないが、700mVを越え、こちらもいい感じだ。ただ、実験4に関して、実験1の結果の再現ができていないので、もうしばらく電圧測定を続け、様子をみようと思う。

そして、実験3であるが、明らかに何かがおかしい。3日目まで、値がどんどん下がってしまったのだ。カソード電極は、お玉の形状をしているので、土と接触している部分が少ないから?と原因を推測し、電極が平らになるように、網目に十字の切れ込みを入れてみた。

9時間後、電圧を計測したが、結果は思わしくなかった。うーんと、原因について悩んでいたのだが、ふと気づくとアノード電極とカソード電極が接触していたのに気づいてしまった。電極作り5で作った電極を使っていたが、取っ手の棒が被覆されていないので、カソード電極をいじっているうちに、接触してしまったようだ。

痛恨のミスをしてしまったが、これも良い勉強である。

電極の接触が無いことを確認し、しばらく様子をみていると、電圧はいい感じで回復した。416mVを観察した。この値を4日目の値とした。

しかし5日目、またもや188mVに下がってしまった。電極の接触はない。電極の不具合だと思うが、原因究明するのも難しそうなので、ここまでを一区切りとした。次回、カソード電極を新しいものに交換して様子をみたいと思う。

続く。