家庭でなんとか籾摺りをしたい〜その2〜


古代米を含めた少量の籾摺りが家庭で出来ないかと思い、アイディアを実践中である。前回は、ハンディフードプロセッサを使って籾摺りを試したが、回転する刃が鋭いためか、籾殻は外れるが、玄米が砕けるものが目立ってしまった。そこで3Dプリンタで鋭くないプラスチックの回転刃を作り、再度試すこととした。

今回制作したプラスチック回転刃

写真上が、ハンディフードプロセッサ付属の金属回転刃。写真下が、今回3Dプリンタで制作したプラスチック回転刃(ナイロン製)。(綺麗な状態で写真を撮り忘れました)

 

回転刃の取り付け

ハンディフードプロセッサのマニュアルに、回転刃の取り外し方が記載されているので、付属のツールを使い金属のパイプを回して外し、回転刃を交換した。精度が0.3mm程度と謳われていたが、穴寸に余裕を持たせなかったため、いまいち穴へのハマりが悪かったが、とりあえずは固定ができた。

籾摺り

籾から籾殻を取り除いて玄米にする工程が一般的に籾摺りと呼ばれているが、その工程は、さらに3つの工程に分けることができる。

  1. 籾から籾殻を外す(脱皮)
  2. 籾殻を取り除く
  3. 玄米の中に残る籾を取り除く

今回のそれぞれの工程の方式は、次のようになる。

  1. ハンディフードプロセッサの回転刃による衝撃で籾殻を外す方式
  2. 唐箕のように風で籾殻だけを吹き飛ばす方式
  3. 手動で取り除く方式。なお、玄米の中に残る籾を取り除く工程がなぜ必要かというと、一度の脱皮作業で籾から籾殻を100%外して玄米にすることは難しく、脱皮できない籾が残るためだ。なので、籾のない玄米を得るためには、玄米の中から籾を取り除き、再び工程1〜3を繰り返す必要がある。

籾から籾殻を外す

籾は前回同様に、赤米(紅吉兆・神丹穂がメイン)1合弱を使用。粒径が長く、芒(のぎ)も長い籾を容器に投入。

蓋を被せて、Lowボタン(低速回転モード)で約40秒(20秒x2回)運転する。ちなみにこのハンディフードプロセッサには、LowボタンとHighボタン(高速回転モード)がある。

籾殻が外れているのが確認できる。

籾殻を取り除く

籾殻を取り除くには、一般的に唐箕(とうみ)と呼ばれる、風を起こして籾殻を吹き飛ばす装置を使う。しかし、家庭には通常ないので、家庭にありそうなものでやりたい。そこで考えたのが、キッチンシンクで使うゴミネットを容器に被せて、ドライヤーの風で籾殻を吹き飛ばす方法だ。

風を当てる角度をうまく調整し15秒から20秒も風を当てれば、ネットに籾殻が溜まっていく。ネットに溜った籾殻を適宜取り除きながら数回繰り返すことで、ほぼ籾殻は無くなった。ただ細かいゴミがネットを通り抜けて、周辺が粉だらけになるので、汚れても良い屋外でやるか、事前に水切りボウルなどでふるいをかけ、細かいゴミを取り除いてから風を当てた方が良さそうであった。

玄米の中に残る籾を取り除く

玄米の中に残る籾を取り除く工程では、万石(まんごく)式、回転式、揺動式といくつかの方式があるそうだが、今回は、手動で籾を選別した。

薄いトレーに適量移し籾をピックアップしていく。地味な作業で時間はかかるが確実な方式でもある。今後は自作の籾選別機を作って他の方式を試して行きたいと思う。

で、よく見てみると、やはり砕け米が混じっている事が判明した。ハンディフードプロセッサの運転時間が長かったのかもしれない。なので、次はハンディフードプロセッサの運転時間を変えてちょうど良い塩梅を探ることにした。

適切な運転時間を探る

では適切な運転時間を決めるに当たって、具体的な数値による評価基準を決めたいと思う。評価基準としては、籾摺り終了後における、取り除けなかった籾数(残籾数)と回転刃の衝撃による砕けた米の数(砕け米数)を計測することにした。砕け米のカウント方法としては、玄米を100%として、その大きさの40%以下のものを目視で確認してカウントした。籾の量は、1合弱(67g)とした。

実験No. 高速運転時間[s] 低速運転時間[s] 残籾数[個] 砕け米数[個]
1 35 289 241(2g)
2 40 98 330(3g)
3 45 40 407(4g)
4 15 25 47 509
5 20 15 39 537

実験No.1、2、3は、低速運転時間35秒、40秒、45秒で運転した場合の残籾数と砕け米数である。運転時間が多くなるにつれて、残籾数が減り、砕け米数が増えるという結果は、予想通りであった。で、45秒の運転で、残籾数は40、砕け米数は407となったが、残った籾を40個程度なら数分で手で取り除けることと、砕け米数も、400個程度であれば、あまり気にならないレベルであることから、この状態を一つの目安とすることにした。

その後さらに、ハンディーフードプロセッサの運転時間を短縮できないかと考え、ハンディーフードプロセッサの高速運転モードを併用することを検討した。回転刃による籾への衝撃回数が脱皮する籾数と相関があると考えられるので、高速回転によって衝撃回数が増えれば、短い時間でも、一定の脱皮する籾数が得られると考えられるからだ。

実験4、5は、高速運転モードも併用して運転した場合の、残籾数と砕け米数の結果である。実験3の砕け米数よりは、少し大きい値(500個台)を示したが、実験3の45秒に比べて、実験4及び5のトータル運転時間は短い時間(実験4=40秒、実験5=35秒)となり、その時間で、実験3と同程度の残籾数(40前後)を得ることができた。

プラスチック回転刃の効果確認

実験No. 高速運転時間[s] 低速運転時間[s] 残籾数[個] 砕け米数[個]
6 20(10×2回) 269 2665(13g)
7 30(15×2回) 29 7380(36g)

ちなみに、制作したプラスチック回転刃がどれ程の効果があるのか効果を確認するために、ハンディフードプロセッサ標準の金属刃でのデータも改めて収集した。残籾数が29個となった低速運転時間30秒における砕け米数は、7380及んだことから、実験5の537と比べて、砕け米数は約14分の1に減り、制作したプラスチック回転刃に、効果があることが確認できた。なお、砕け米数の選別はなんとかできたが、それをカウントするのはとても大変であったので、1gあたりの個数を205として算出した。

まとめ

古代米を含めた少量の籾摺りが家庭で出来ないかと思い、ハンディフードプロセッサ自作のプラスチック製回転刃を利用して、籾摺りある程度できることがわかった。

昨年、娘が小学校でバケツ稲作をやっていたが、籾摺りとして、すり鉢に籾を入れて軟式野球ボールでこするという時間のかかる作業をやっていたそうだ。自分でもやったことがあるが、労力と時間のかかる作業で結構大変な作業だ。

軟式野球ボールでこすっても、特別な籾摺り機を購入しても良いかと思うが、もしご家庭にハンディフードプロセッサがあるなら、今回行った方式で少量の籾摺りをするのはいかがであろうか。

今後は、制作したプラスチック回転刃の穴がいまいち合わなかった問題の修正、実用的な必要量を現実的な時間で籾摺りできるのかの検証、それから、残る籾の選別装置の自作・実験を行ってみたいと思う。

続く。