小川と硝酸態窒素との関わり


硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ)というものをご存じだろうか?

硝酸態窒素とは

硝酸イオン(NO3-)のように酸化窒素の形で存在する窒素(N)のことをいう。人間を含む動物が硝酸態窒素を大量に摂取すると、メトヘモグロビン血症などの酸素欠乏症を引き起こす可能性があることが指摘されている。なので、水道水質基準にも基準値が設けられ管理されている。

河川では

現在、河川の環境基準では、硝酸態窒素の項目は含まれていないが、河川の水質調査では、継続的な水質観測が行われている。

以前参加させて頂いた、新河岸川水系を対象にした身近な川・里川の一斉調査という川の水質調査活動では、アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素に加え硝酸態窒素に関しても調査していたことを思い出す。

魚への影響

ところで、以前こんな話を聞いた事がある。絶滅危惧種のムサシトミヨは、埼玉県熊谷市の元荒川上流部にしか生息しない淡水魚で、保護増殖活動が行われている。保護増殖が成功した後には、昔に生息していた地へ移入する話があったようだ。しかし移入先の水質として、硝酸態窒素の濃度が、生息していた当時より高いという事があり、移入した場合の問題が心配されていた。

なぜ高いのか、正確なところは不明だが、農地で施される肥料が原因しているのではということだ。過剰に施された肥料成分(硝酸態窒素)が水に溶け、地下水として流れ、河川に流入しているのだ。

冒頭で触れた、硝酸態窒素による酸素欠乏症という事も、魚への心配事の一つであったのかもしれない。

アクアリウムでも

私は自宅の水槽で淡水魚を飼育を楽しんでいる。元気な野菜を育てるには土づくりからと言われるが、元気な魚を飼育するには、水つくりが大事である。魚のフンなどの有機物が、水中のバクテリアによって分解され、有機物→アンモニア→亜硝酸塩→硝酸塩へ変化していく課程がある。

水つくりがうまくいっていても、硝酸塩が最終的に蓄積されていくので、硝酸態窒素の除去として、定期的な水替えが必要になるのだ。

まとめ

硝酸態窒素について、理解は深まっただろうか?

体内に取り込み過ぎると人間にリスクがあるように、小川の魚にとってもリスクがあるので、注意しておくべき物質であるだろう。

野菜作りでは、ついつい化学肥料を多めに撒いてしまうことってあると思うが、地下に浸み込み河川への汚染に繋がっていくという事実をぜひ知っておきたい。