特定外来生物 オオタナゴについて


こんばんは。

先日は、外来生物法における特定外来生物に追加指定されたオオタナゴの形態と取扱いに関する勉強会(主催:土浦の自然を守る会)に参加してきましたので、知らない人にも知ってもらいたいと思い記事にしてみました。

オオタナゴとは

皆さんは、オオタナゴという淡水魚をご存知でしょうか?

タナゴの仲間で、イシガイなどの二枚貝に卵を産み、産卵期のオスは体表が薄いピンク、腹部が薄い黒、尻ビレに白と黒の縞模様といった婚姻色を呈する魚(外来種)です。

2001年に霞ヶ浦で確認されて以来、爆発的に増えて、在来のタナゴ類(タナゴ、アカヒレタビラ)の生息が危ぶまれています。

これは、オオタナゴが大型になるため、産卵に使用する二枚貝争奪戦に在来のタナゴ類が負けてしまい、共存せずに、排他的にオオタナゴが増えているという事態が起きているからと考えられています。

そもそもなんで、オオタナゴが霞ヶ浦に侵入したのでしょうか?

いくつか説があるようですが、真珠養殖用として中国から輸入されたヒレイケチョウガイの卵や胚から浮出した説が有力のようです。

img_7512写真は今年生まれで体長約5cm。

特定外来生物へ指定

現在は霞ヶ浦だけでなく、千葉県、東京都、埼玉県、栃木県の利根川水系にも生息域が拡大しているということです。

そんなオオタナゴが、外来生物法における特定外来生物に追加指定され、2016年10月1日より、飼養、保管、運搬、放出、輸入等の規制が開始されました。

罰則には厳しく、例えば、
個人が「許可なく飼養等をした場合(愛がん(ペット)等の目的)
⇒「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」
個人が「許可なく野外に放った場合」
⇒「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」
一方、法人が「許可なく野外に放った場合」
⇒「1億円以下の罰金」

詳しくは環境省のホームページ「罰則について」に記載されています。

具体的な取扱い方

この日は、環境省の職員の方が講師として招かれていて、具体的な取扱い方を解説してくれました。

※以下、解説頂いた内容を記載しておりますが、法律的解釈を保証するものではございませんので、ご留意ください。

オオタナゴを釣ってしまったら

【キャッチ&リリース】
釣ったその場所へ放すことは規制されていません。「殺すことしたくない」と思う方は、放すのがよろしいでしょう。しかし、本来は「居てはいけない魚」であり、在来タナゴ類の生息を脅かす存在なので、釣ったその場所へ放つよりは、死に至らしめた方が生物多様性を高めることに繋がるでしょう。それと、「釣ったその場所」というのも曖昧な表現ですが、釣った河川・湖沼の河岸・湖岸と同じ岸であっても、明らかに遠い場所で放つ場合は、アウトになるとのことですので注意が必要です。

【運搬】
釣ってしまったオオタナゴを、釣った河川・湖沼の河岸・湖岸に隣接する道路に至らない範囲で生きた個体運び移すことは出来ます。ですが、生きた個体を持って、釣った河川・湖沼の河岸・湖岸に隣接する道路へ出たらアウトになるとのことですので注意が必要です。

釣った河川・湖沼の河岸・湖岸に戻すか殺処分することが明らかな状況で、数時間生きた個体を取り扱うことは出来ます。(食べるためとか殺処分するための運び移しはセーフとのことでした。)

弱らせる方向にあるかどうかはポイントで、エアーポンプを使って生きた個体をキープしていると弱らせる方向とは言えないのでエアーポンプの使用は避けた方が良いでしょう。

随伴移入

タナゴ類に関しては産卵母貝である二枚貝を媒介して、非意図的な移入が起こって問題になっています。霞ヶ浦へ移入された経緯も、随伴移入が疑われていることは先に述べました。

最近では、観賞魚店のみならず、水質浄化対策を目的として、二枚貝が流通・放流されています。二枚貝の購入や移動には、体中のタナゴ類の卵や胚の存在に注意しないといけません。

最後に

オオタナゴは、定着段階が「侵入初期/限定分布」にあることから、今回の追加指定によって、これ以上の分布拡大は絶対に阻止するという強い意志があるとのことです。

広く周知されて、在来タナゴ類が守られることを期待します。

img_7515写真は、勉強会の参加者がこの日釣り上げたオオタナゴです。この後オオタナゴは、主催者によって殺処分されたとのことです。

参考文献
萩原富司『外来種の防除:初期コントロールを目指して-霞ヶ浦におけるオオタナゴに関する調査-』

葛島一美・熊谷正裕『日本タナゴ釣り紀行』 つり人社