タグ別アーカイブ: 地下水

石神井川と武蔵関公園の池の水を比べてみた

田無駅から西武線新宿線を使って都内に通勤していると、東伏見駅と武蔵関駅の間に、池のある公園が見える。
東京都練馬区にある武蔵関公園だ。

IMG_9276この公園には富士見池というひょうたん型の池がある。その昔、「関の溜池」という湧水池あり、石神井川の水源の一つになっていたという。
現在は、北側はボート池になっていて、3月から11月の間、手漕ぎボートを楽しめる。

夏場、電車の窓から見える池は、緑色に見えたが、12月のこの日、緑色ではなかったが、茶色く透明感はなかった。湧水の激減で水の循環が少なく水質はよろしくないようだ。
IMG_9277一方で石神井川を覗くと、水の透明度がとっても良いのに驚いた。垂直の鉄の護岸の見た目から、ドブ川のイメージをついつい持ってしまいがちだが、上から覗くと40cm程の水深の川底がはっきりと見える。クリアな水があるだけに、鉄の護岸が本当に残念な感じだ。

IMG_9280すぐ上流にある早稲田大学グラウンド横は鉄の護岸と正反対で、多自然型工法で整備されている。

IMG_9279瀬や淵といった要素に加え、岸辺の植物が、自然な川を形作っている。川を眺めていると、川底の深みに小魚の姿や、カワセミがビューンと通り過ぎるのも観察できた。ここはいい感じの小川となっている区間だ。

IMG_9281護岸の隙間からは湧水がいくつか確認できた。この湧水が水質向上に貢献していると思われる。

そんな石神井川の水をポンプで揚水(参考資料には1日540立方メートという記載も)して池へ導水しているらしいが、効果は出ていないようだ。

平常時の貯水量が不明だが、満水時貯水量(33800立方メートル)の半分としても、全部の水が入れ替わるのに約1ヶ月かかる計算になる。井の頭池の湧水が豊富だった時は、1週間で池の水が全部入れ替わる湧水量であったというから、導水量は池の水質維持には十分とは言えないだろう。

気になったは、池の水質悪化を防ぐためと捨てた釣り糸が野鳥にからまるのを防ぐためという理由で、つり禁止という看板があることだ。一見するとよくある看板の禁止事項にも思えるが、少し違和感を感じた。

撒き餌を含む釣り餌が池の富栄養化の原因の一つになり得ることは理解している。しかし、どれほど影響しているのか、ちゃんと把握した上で記載しているんだろうか。釣り禁止の現在、水質改善ができていない状況を考慮すると、釣り禁止が水質改善の効果をもたらしていないと言える。

IMG_9273おそらく落ち葉といった有機物が池に入る量の方が圧倒的に多いだろうから、落ち葉に由来する池の富栄養化の方が大きいと思う。池への導水量が増やせない事情があるとするなら、池に入る有機物量を減らすとい手もある。池の水質改善を本気で考えているなら、釣り餌の流入を止めるだけではまず足りない。池から落ち葉やヘドロを出すことも必要だろう。流行りのかいぼりの計画はないのだろうか。

私は釣り禁止を止めろと言いたい訳ではない。池の水質改善に効果が高くないのに、看板の最初に書くのはどうなんだろうという疑問があるだけだ。捨てた釣り糸が野鳥にからまるから釣り禁止だとシンプルに書いていただいた方が、良いのではないかと。

池の水質改善気になるのは、そばを流れる石神井川の川底が池の底より低いことだ。昭和の河川改修で川底を深くしたからだ。
このことから池の水が地下を通って石神井川へ流れているとの指摘もある。

参考
https://www.env.go.jp/water/junkan/case2/pdf/11.pdf

西東京市の地下にある珍しいものとは?

西東京市の地下には地下水堆(ちかすいたい)というものが2つ存在する。西東京市民として、なにげに誇れる地下自慢であるので紹介する。

地下水堆って?

地下水堆とは、その発見者で名づけ親である東京理科大学の吉村信吉さんの定義によると、次のようなものである。

地形起伏によらず、局所的に地下水面がドーム状に隆起しているもの。

彼は、多数の井戸から地下水面の高さを調査し、地下水面が盛り上がっていることを発見した。武蔵野台地に4つの地下水堆を発見している。

  • 又六地下水堆: 保谷村(西東京市)
  • 上宿地下水堆: 保谷村、田無村(西東京市)
  • 井荻・天沼地下水堆: 杉並区
  • 仙川地下水堆: 三鷹村(三鷹市)

そしてなんと、発見した4つの地下水堆の内、2つが西東京市内にあるのだ。

初めて地下水面の盛り上がりを発見したのは仙川地下水堆であるが、又六・上宿地下水堆を発見したとき、初めてその論文で「地下水堆」と命名したのだ。

そして、又六・上宿地下水堆だが、発見した昭和14年当時は、地表から約2m(又六地下水堆)とが約3m(上宿)とかの位置にあったという。つまり、2、3m穴を掘ると地下水が出てきたということにになる。

こんな水が得やすい場所だったので、昔から人が住んでいたようだ。少なくとも鎌倉時代後期には人家があったとされている。

浅い窪地との関係

彼は、谷戸地域から東へ伸びる浅い窪地又六・上宿地下水堆との関係性を述べている。

谷戸の浅い窪地10倍地名入り完成※上図は国土地理院の基盤地図情報・数値標高モデルのデータをカシミール3Dで表示させて作ったもの。

この浅く長い窪地は2つあり、白子川のある窪地へと合流するものだ。両窪地とも幅250m、深さ2m未満で、窪地の中央にはシマッポと呼ばれている幅1m、深さ0.5m以内のある。その溝には、豪雨による野水(寄り水)が出た後だけ流れ、普段は流れがない。

この浅い窪地が上宿や又六付近にある理由は地下水堆が関係しているという。

地下水堆の下部が粘土質であり、地下水を滞留させると同時に雨水の浸透を妨げるため、野水または寄り水となって地表に溢れ、その流れが地表を侵蝕したのであろうということだ。

これまで、この地域は豪雨時に野水が発生するという資料を見たことがあるが、地下水堆がその一因であったとは知らなかった。

まとめ

野水の影響を受ける人たちにとっては、地下水堆が歓迎できるものではないかもしれないが、吉村さんが発見した2つの地下水堆が西東京市にあるということは、西東京市民であれば誰かに言いたいネタの一つになるのではないかと思う。

ちなみに野水が発生した後は、一時的にどんな小川ができていたのであろうかとても気になる。

参考

東京市西郊保谷村上宿附近の地下水堆と聚落、淺い窪地 (武藏野臺地の地下水-第五報)
吉村信吉

西東京市2017年 講座 「田無の水と人々の暮らし」
郷土史研究家・田無地方史研究会代表 近辻喜一

地下水は誰のもの?

小川の水源の一つとして湧水があるが、湧水は地下水が地表に湧き出た水である。

地下水の二つの視点

そんな地下水であるが、所有権について最近は二つの視点があるという。

地下水は私水であるという考えと、地下水は共有資源だという考えだ。

これまでは、土地所有権の範囲を定めた法律(民法)に求める考えとして、地下水は私水であるという考えが主流であったようだ。土地所有権に付随する地下水は土地所有者の自由な使用が当然の条理とされていた。

しかし近年、地下水が地球もしくは流域の水循環の一環として流動していることは良く知られてきており、地下水は共有資源であるという考えがでてきている。水循環とは、降雨→地下へ浸透→地下で流動→地表へ流出→蒸発→降雨→…である。

昭和41年の松山地裁の判決でも、地下水は「流動する性質」を持つため「共有資源」であるとし、利益(損益)の公平かつ妥当な分配の原則を適用したという。

近隣の土地で、地下水が大量に汲み上げられた結果、自分の敷地の井戸から採取する地下水が少なくなってしまうのは道理に合わないと思う。

現時点で、地下水の所有権について明確に規定したルールは確立していないが、地下水が共有資源であるという考え方は、今後主流の考えになっていくだろうと思う。

井戸水を使用する場合は、自戒を込めて、共有資源であることを理解した上で妥当な使用を心掛けたいものだ。

おまけ

流動するものと言えば、大気も流動している。

そういえば、大気中の水蒸気を集めて水をつくるプロジェクト(WARKA WATER)の話を思い出した。飲み水が得られない乾燥地域において画期的なプロジェクトだ。

今のところ、この装置で水を作っても、大量に作れるわけではないので、周辺の人達から、「そっちで水作り過ぎだぞ!」とクレームを受けることはないと思うが、この装置が進化したときは、大気の水蒸気も共有資源として考えられる時代がくるかもしれない。

 

参考
「育水のすすめ 地下水の利用と保全」 GUPI共生型地下水技術活用研究会 著 西垣 誠・瀬古 一郎・中村 裕昭 編著

武蔵野市の地下水の割合は減らせないの?

こんばんは。

前回の記事では、井の頭池の湧水復活に期待がもてる方法として、守田優さんの著書を紹介し、武蔵野市の地下水の汲み上げを適切に削減できるかが大きな課題であるとしました。で、武蔵野市の水道における地下水利用が約80%と大きいので、割合を減らせないのか武蔵野市に問い合わせてみました。

どうして地下水の割合が高いの?

武蔵野市水道部工務課からの回答を一部補足して要約します。

【水道事業の創成期】
水道事業は、市独自の事業として昭和29年に始まった。水源は市内の深井戸100%であった。多摩地区の他の市町でも自前の地下水に依存する形で創設された。
【人口急増期】
昭和30年代から多摩地区で人口が急増し水需要が逼迫した。各市町村は、東京都へ支援を要請し、その結果、東京都水道局からの23区向けの浄水からの分水が実現した。武蔵野市では昭和41年から定常的に分水を受水。当時の割合は地下水60%、河川水40%。でもこの分水料金が、23区向けの料金と格差があった。
【都営一元化】
多摩地区市町は格差是正を求め、東京都はこれに応じる形で、水道事業の都営一元化を決めた。平成29年3月現在、計画対象市29市のうち、昭島市、羽村市、武蔵野市の3市を除く26市が一元化されている。

?という感じなので、私なりの解釈で簡潔にまとめてみます。

どうして地下水の割合が高いの?

「もともと地下水100%で水道を始めたけど、人口が増えて水道が不足したので、河川水を東京都から購入して不足を補うようにした。一方、他市のように、水道事業の一元化がまだ進んでいないから、他市に比べて、地下水の割合が高い。」

と言ったところでしょう。

武蔵野市は現在、都営一元化を進めるための準備を進めているようですが、何が問題で一元化が進んでいないのか、回答からはいまいち分かりませんでした。しかし、平成12年には次のような意向が示されていたようです。

当面は武蔵野市の事業として運営し、一元化については市が進めている主要な施設整備が完了する段階又は一元化に関する住民のコンセンサスが得られる段階で検討する。(平成12年の意向)

 

地下水の割合は減らせるの?

一元化がいつ実施されるのか分かりませんが、実施されればいづれ武蔵野市の河川水使用の割合が増え、地下水の割合は減ることと思われます。地下水の汲み上げを減らすことで、井の頭池の湧水が復活するはずだという立場をとると、「早く一元化してください!」ということになります。

一方、一元化しないで地下水くみ上げを減らす場合、東京都からの河川水の購入を増やす必要が生じます。その場合、経費を増やせる程、予算に余裕はないとのことでした。

【水道事業の経営】
給水原価とは、水道水を1立方メートル作るのに必要とする経費で、平成27年度では184.14円/立方メートルである。
その内訳H27武蔵野市給水原価東京都水道局から購入する河川水は、水量で全体の約20%であるが、給水原価に占める受水費の割合は全体の45%となっている。河川水の割合を増やすことは、経費を増やすことになり、水道事業の経営を圧迫することにつながるため、大変厳しい状況である。

決められた予算のなかで水道事業が行われているのだから、これはもっともな回答だと思います。

まとめ

武蔵野市の水道の地下水割合を減らすには、水道事業の都営一元化の問題だったり、水道事業の予算の問題だったり、難しい政治の課題があることがわかりました。一元化を待つことが、一番現実的な気がしますが、いづれにしても地下水汲み上げ量が減る方策が早くなされることを切望します。

井の頭池の湧水復活により、東京に小川が増えるきっかけになると信じています。

参考
・武蔵野市水道部工務課からの回答
多摩地域水道の都営一元化における広域化の意味
多摩地区の水道

井の頭池の湧水復活に最も期待できる方法

こんばんは。

東京の桜の開花は3/23と予想されていますが、お花見が待ち遠しいですね。

お花見スポットとして有名な井の頭池ですが、今回は、井の頭池の湧水復活に関することを書いてみようと思います。

井の頭池は、東京都武蔵野市と三鷹市にまたがる井の頭恩賜公園内にある池で、開園100周年を迎える2017年までに、井の頭池の底が見えるようにする取り組みが行われています。

その池ですが、1963年に湧水が涸渇したため現在は地下からポンプで1日約3500トンが汲み上げられて池の水が維持されています。

これまで、井の頭池の湧水が涸渇した原因が、「周辺地域の都市化によって地下に浸みこむ雨水が減った」ためと理解していました。私がこれまで参考にした資料にもそう書かれてたものが多くありました。

しかし、守田優の著書「地下水は語る」にその本当の原因について詳しく書かれていました。

「そうだったのか~」という気持ちにさせられました。

井の頭池が涸渇した本当の原因

結論からいうと、地下水の過剰な汲み上げだといいます。

現在は、雨水が地下に浸みこんで補給されるより速いペースで汲み上げられているというのです。

一般的に雨水による地下への補給量は1日1ミリメートルという指標があるそうです。

一方、2009年の武蔵野地区の汲み上げ量(地域の面積あたり)は

武蔵野市:4.1ミリメートル

三鷹市:2.3ミリメートル

小金井市:2.0ミリメートル

だそうです。

いづれの市も、補給量のを越えて汲み上げているので、これだけで水の収支のバランスが良くないことが理解できると思います

そこで、武蔵野市のホームページをみると、水道水の約8割が地下水を汲み上げて使用していると記載されています。

三鷹市については約6割が、小金井市については約5割が地下水だそうです。(最新のデータではないかもしれません。)

「地下水だから水がおいしいよ」とうたっておりますが、武蔵野市民が飲んでいる水道水と井の頭池の湧水枯渇との因果関係について知ったら、武蔵野市民はそのまま水道水を飲み続けられるでしょうか?おそら多くの武蔵野市民はこのことを知らないのではないかと思ってます。

少なくとも私は、武蔵野市に10年くらい前に住んだことがありますが知りませんでした…

 

深井戸から汲み上げてるから井の頭池の湧水と関係ないのでは?

2017.3.28追記

武蔵野市の水道水源は、平均で地下250メートルの深井戸から汲み上げています。この地下水は被圧地下水と呼ばれています。一方、井の頭池の湧水は、浅い礫層からの地下水(不圧地下水)を水源にしています。被圧地下水と不圧地下水は普通は繋がっていないので、被圧地下水の汲み上げ量を減らしても、井の頭池の湧水が増えないのではという疑問が残ります。

しかし、武蔵野台地では、不圧地下水の層(不圧帯水層)と被圧地下水の層(被圧帯水層)がつながっているということを述べております。その裏付けとしては、1975頃、東京都土木研究所が実施した地下水の流動の調査を挙げています。武蔵野市の地下100m地点でトリチウム濃度が10から40を超えていたことから、不圧地下水から被圧地下水への漏水が生じていることを示唆しているというのです。また、掘削した井戸の周囲から人為的な漏水の可能性があることも指摘しています。

仮に漏水があったとしても、その量はよくわからないので、井の頭池の復活について確実なことは言えないと思いますが、1つの可能性として期待ができるのではと思ってます。(あくまで個人的な意見です)

課題

著者は、地下水の汲み上げを適正に削減することで、井の頭池の湧水が復活するにちがいないと述べています。

井の頭池(神田川水源)と同じく、善福寺池(善福寺川水源)、三宝寺池(石神井川水源)についても、三鷹市、武蔵野市、練馬区とつながる水脈からの汲み上げを適正に削減することで、湧水復活ができることを述べています。

雨水浸透桝を多く設置して雨水をなるべく地下へ浸透させることはとても重要なのですが、それ以上に地下水の汲み上げを削減することがもっとも重要だということだったのです。

よって、今後、地下水の汲み上げを適切に削減できるかが大きな課題となります。

武蔵野市民にとっては、自分たちの飲み水を変えてまで、憩いのシンボルである井の頭池の復活に踏み切ることができるのか?そこが大きなポイントであることでしょう。

武蔵野市がここまで地下水に頼る理由が何なのかは疑問が残りますので、改めて調査してみようと思います。

参考
・武蔵野市ホームページ
http://www.city.musashino.lg.jp/kids/sugoi/1011370.html
・守田 優(2012) 地下水は語る-見えない資源の危機 岩波新書