小川があると蚊が増える?

小川があると蚊が増える?

この疑問をよく耳にする。

これは無理もない。刺されると痒いだけでなく、地球上でもっとも人間を殺しているのが蚊だからだ。
2014年のこの記事によると、1年間に人間が蚊によって殺された数が72万5千人で1位だという。もちろん、蚊が人間を直接殺すということではなく、蚊が人間に運ぶマラリアなどの病原体が死因になる。

蚊は人間にとって危険な生き物であるということは間違いないだろう。

そうすると、人間の住むところから蚊を遠ざけたいという気持ちは当然起こる。そして蚊の発生源つまりボウフラが湧く箇所を減らしたいとい気持ちになるだろう。

「蚊の発生源」=「水のあるところ」?

ここで皆さんに聞いて見たい事がある。
「蚊の発生源」=「水のあるところ」
という考えを持っていないだろうか?

そうだとするとこれは行き過ぎた考えである。

なぜなら、先日、蚊に詳しい方とお話ししたのだが「水のあるところ」でも「流れがあると蚊の発生源になりにくい」というからだ。

気になったので、もう少しネットでも調べてみた。山形衛生研究所が発行したニュースにも同じ事ような事が書かれていた。「ほとんどの蚊は流れのある川などでは発生せず流れがない水域を発生源とします。

まとめ

いかがでしょうか?
水の流れのない雨水が溜まったバケツは、蚊の発生源になりやすいが、流れのある小川は、蚊の発生原になりにくいということのようだ。

注意したいのは、小川には蚊がいないということではなく、流れのある小川は蚊の発生源になりにくいということであり、小川に茂みがあれば、蚊が潜んでいることは十分ありうるので、蚊に刺されないための対策は怠ってはいけない。

児童公園に水遊び場があったりするが、蚊の発生という不安から閉鎖されたという場合もあるようだ。閉鎖を検討する前に流れを作って蚊の発生に対抗する方法を検討することもありだと思う。

子供が大好きな水遊び場を、安易に奪ってしまうことがないようにあって欲しい。

おまけ

ちなみに家の庭やベランダで蚊に困っている人は、蚊の発生源になりそうな水たまりがないかなチェックしてみることをオススメする。

  • バケツ
  • 子供の遊具(シャベルとか)
  • 空き缶、空き瓶
  • 園芸用の植木鉢の受け皿、庭の汲み置き水、放置のジョウロ
  • 雨よけシート(ブルーシート)の窪みに溜まった水
  • 側溝や雨どいの詰まり
  • 古タイヤ
  • 竹やぶの竹の切り株
    参考:目黒区ーこんなところが蚊の発生源

池はどうするの?

我が家のプラ舟池では、小魚を飼いボウフラを食べてもらうことと、太陽光で動作する噴水を導入して水面に流れを作ることの2つで対策をしている。

少しは発生源対策に貢献しているかと…

今度、水の流れのないバケツと水の流れのあるバケツでボウフラの発生の違いが確認できるか実験でもしてみたいと思う。

 

田無用水の痕跡を辿る散歩のリポート

2017年6月11日、田無用水の痕跡を辿る散歩ツアーを開催し、3名の方にご参加いただきました。

この散歩ツアーは、江戸時代前期に田無村(現西東京市)に飲み水を供給するために玉川上水から分水してつくられた用水路「田無用水」の痕跡を探しながら、最上流まで歩いていく散歩です。

田無用水は、東京都西東京市、小平市を流れていた全長約5.6kmの用水路でしたが、現在は上流部約1kmまで水が流れていますが、それより下流は水は無く、暗渠(フタがされている)もしくは溝が埋まり、痕跡さえ消えてしまったところもあります。

田無用水はなぜつくられたのか?

これには田無村が誕生した歴史的背景と田無村が位置する地理的背景を理解することが必要になってきます。

こうした歴史的・地理的背景の話をしながら、かつての流路を予想し、歩いていきました。

見どころダイジェスト

  1. 田無に田んぼ?田無用水の水を使って石神井川沿いに田んぼがありました。昭和初期まで稲作が行われてました。
    田無用水1
  2. かつて滝があった場所。青梅街道と所沢街道の分岐点付近には、2m程度の崖があり、滝の痕跡を窺わせます。
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  3. 田無神社の境内を横切る。田無用水の文字が見られる看板的なものは、ここにしかありません。
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  4. 田無用水と深い関係のある田無村名主の家    下田家(地図中央)。下田半兵衛さんが田無用水を作るのに尽力されました。田無用水_大正初期_水車2
  5. ここから田柄用水分岐。コンクリのフタが続いていますね。水車もここにあったようです。
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  6. 雨乞いの儀式in橋場。干ばつになると御嶽山から竹筒いっぱいの水を運び、橋場の田無用水で祈祷して雨乞いの神事が行われました。
  7. 用水の立体交差。ローマの水道橋(?)を彷彿させる石樋です。下を流れるのが田無用水で上を流れるのが鈴木用水。「昭和五年十月成」の文字が刻まれてます。田無用水2
  8. 流末が日々変化、生きている田無用水 2ヶ月前は、流末が200mも上流だったんですよ。穴に吸い込まれ地下へ浸み込んでいました。この地下水は何処からまた湧き出すのでしょうか?
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  9. 昔の面影を残す小川の風景。この景色を参加者に見て頂けて良かったです。私のオススメな場所です。
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  10. 田無用水の起点付近。明治初期以降は、この付近で新堀用水から田無用水と関野用水に分岐していたようですが、勝手に侵入できなそうなので、ここまでとしました。
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参加者の感想

感想1 感想2 感想3

散歩のねらい

田無用水は約270年間、田無村の生活を支えてきた貴重な存在であるにも関わらず、西東京市では現在、わずかな痕跡がひっそりと残っているだけです。

歴史的価値がすごくあるのに、市民はあまり関心が無いようです。市民がもっと関心を持った方が良いのでは?なんなら田無用水を復活できないのか?田無用水を知れば知るほどそんな思いが強くなりました。とにかく西東京市民に田無用水の事をもっと知ってもらいたいなと思いました。

そんな思いでこの散歩ツアーを開催しようと思いました。

そしてなにより思うのが、小平市の上流部で水の流れが見られるように、田無用水は生きているということです。2か月前と比べ、流れの先端が200mも下流に伸びていたのです。植物に例えるなら、葉や茎は失ったが根っこの部分で新たな新芽を出そうと虎視眈々としているように見えました。

だから、いつか出てくる新芽を迎えられるように少なくとも流路を整えてあげることが必要だと思うのです。

だけど西東京市のほとんどの流路は暗渠か溝が埋まった状態です。

田無村に再び清流(小川)が流れたらどんな感じでしょう?

清流に魅せられて人も生き物も集まるのだと思います。

そんな未来はいかがでしょうか?

参考
保谷章象一郎著 田無用水

小川に求められるコト

先日オイコノミアというテレビ番組に「そら植物園」の代表である西畠清順さんが出演されていた。
プラントハンターとして流通していない、特殊な場所でしか手に入れれないような植物をクライアントへ届ける仕事もしているという。

又吉さんからの問いに対する答えがとても印象に残ったのでシェアしたい。
「いま求められる植物は?」

「昔は薬や食べ物など直接的に人間の生活に役立つものが求められていた。
今はどんだけ豊かな空間を作り出せるか、どんだけ劇的なシーンを創り出すか、都会では感じにくい季節感を感じてもらうとか、体でなく心に作用するものが求められている。
なんでそこにその木が必要なのか?なんでそこを緑豊かにする必要があるのか?つまり意味のある緑化や意味のある植物空間が求められる。」

植物に求められる事が時代とともに「心に作用する」ものへ変わってきたということだ。
時代とともに変わってきたものと言えば小川も同じだ。

江戸時代に飲み用水や田用水として作られた玉川上水の分水は、時代と共にその役割を終えた。都市部にあった小川は、人口が増えるとともに生活排水が多量に流れる下水の役割になったり、大雨で降った雨を海へ速やかに流す役割へ変わった。

そして今は?

西畠さんの言葉と同じように、人の心に作用する小川というものが、求められていると思う。

「潤いとか安らぎを感じられる小川を」というキャッチフレーズは確かに心を刺激しそうだが、さらに加えて、なんでそこに小川が必要なのか?という意味づけがあるとより心に響きそうだ。

意味づけは、物語と言っても良いだろう。

例えば、小川に関する言い伝えであったり、昔の人が小川とどう関わってきたかだ。

そういった意味づけによって、人の心に作用する小川が増えて欲しいと思う。