小型冷却ファンを微生物燃料電池で回すプロジェクトを8月まで行ってきたが、約28分間であるがファンを回す事ができた。次のチャレンジとして、田んぼ発電を目標に掲げ、取り組んだ事があるのでリポートしたいと思う。ただ結果として良い結果にはならなかったので、やり方を変えていく必要がある事は始めにお伝えしておく。
構想
先ずはどんな電極構成にすべきか考える必要があった。
東京薬科大学の研究室が行っていた方式では、稲の周囲にドーナツ型のフェルト電極を配置しているようであった。アノード電極は泥の層に浅く埋めて、カソード電極は、発泡材料を使って田んぼの水面に浮くようにする方式だ(方式1)。ただこの方式だとアノード電極とカソード電極間の距離は、水位の変動によって変わってしまう。電極間の距離が大きくなりすぎると、出力が低下するはずである。なので水位変動をコントロールできる田んぼであればそれで問題ないと思うが、私が借りている田んぼのように水位変動が大きい場所では問題になりそうであった。
そこで電極間距離を固定にした構成も検討してみた。カソード電極が水面に浮いた状態で、そこから例えば5cm下へ離した位置にアノード電極をワイヤーでつるすことを考える(方式2)。水位変動を克服できるはずだが、アノード電極が泥中でなく水中に露出する状態になるので、果たして発電菌が電極に付着するのかが懸念事項であった。違うパターンとしては、カソード電極は水底に配置し、その下5cm程離した位置にアノード電極を配置する。つまりアノード電極は土中に埋めることになる(方式3)。これだと、今までに実験にように、アノード電極が土中に埋まるので、発電菌の付着は実績有りとなるが、カソード電極は水底に位置するため、これでは酸素が少ない環境となりカソード電極の位置としては適さないと思われる。
以上のように、いくつかの電極位置の構成を検討したが、まずは方式1で進めてみてからまた考える事にした。
それと、電極の形状についてだが、稲との共存を考えるとドーナツ型を真似るのも良いのだが、ドーナツ状に加工するのが手間であったので、電極は稲の条間に配置できるように細長い長方形を考えた。
電極の準備
電極の素材であるが、今回も以前使用したグラファイトフェルトを使用した。サイズは1平方メートルのものをAliExpressで購入した。1000x1000mmのサイズが送られてくると思ったら、800x1300mmのサイズで送られてきたので少し驚いた。仕様である1平方メートルは満たしているものの予想外のサイズであった。これを4等分にカットし、1枚は200x1300mmとした。
加工
加工は次の2点を行った。
- フェルトの中にステンレス針金を通す
- カソード電極に浮力材を取り付ける
1 であるが、フェルト短辺の中央から1m以上、針金を通すのは結構難しかった。真っ直ぐで曲がらない棒を通すならまだしも、丸まって販売されている針金なので、真っ直ぐに手直ししたつもりでもクセがついていて、なかなか真っ直ぐに通せないのだ。なので、途中針金がフェルトの外に顔を出しては、また中に埋め込んで進めていく波縫いのような見た目になってしまった。それでも、特に電気的な特性には影響無いはずなのでこれでOKとした。
2については、浮力材として、発泡ポリエチレン(水泳で使うビート板の素材)を使った。
40x150x15mm程度にカットしたものを6本用意し、これらをバランスよくフェルトへ固定した。固定方法は上の写真のように、ステンレス針金で固定した。
田んぼへの設置
いよいよ、田んぼへの設置である。新品のグラファイトフェルトは空気を含んでいるためか、浮力が強く水底に沈めても浮かび上がってしまうほどであった。なので、アノード電極を土中に浅く埋めることが、10cm程水深のあったこの時点では難しく、土中に埋めるのは諦め、水底に竹棒で固定し、浮き上がってこないようにした。一方、カソード電極は、浮力材によって水面に浮かすことができた。電極間の距離はこの時点では、水深の10cm程度である。これまでの実験では、電極間距離は5cm程度だったので離れ過ぎているかもしれないが、とりあえず、この状態でしばらく様子をみることとした。
2週間後、想定はしていた事であるがはやくも田んぼの水がなくなっていた。田んぼに入る用水は既に止まっており、8月下旬から9月上旬は晴天続きであったことから、水が蒸発し、田面が露出してしまったのだ。この状態では電極がほぼくっついているようなもので、電池になっていない。失敗であった。
しかも、ザリガニがフェルトや浮力材をボロボロにちぎるというハプニングも発生した。ザリガニの巣穴の上にフェルトが被さっていたため、障害物を除去する行動をとったのだろう。これについては想定外であった。
気を取り直し、電極配置について修正を加えた。ちょうど水が無い状態なので、アノード電極は浅く(約3cm)土中に埋め、カソード電極はその上に置いた。雨が降り水位が上がれば、水面にに浮く想定である。この状態で一週間程様子を見た。
その後、運良く恵みの雨が降り、水位は上昇していた。この時の電池の開放電圧を測定した結果、1つは230mV、もう一つは128Vとなった。今一つの結果となってしまった。
翌週以降も測定したが、開放電圧は上昇することなく、むしろ少しずつ低下しいった。やはり、このやり方ではダメだったようである。
まとめ
始めから想定していたことであるが、水位変動によって電極間距離が変わってしまう問題に加えて、ザリガニが電極や浮力材をちぎるという問題も発生した。この問題を解決しないと先に進めない気もするが、方向性を変えた方が良いのかもしれない。
そもそもであるが、微生物燃料による発電の規模を少し大きくしてみたいというのが目的であったので、田んぼ以外の場所でもよいのである。例えば、湿地だったり、水量の少ない小川なんかは、大雨時などは別として、平常時を考えれば発電に適した場所かもしれない。次は、そういった場所で実施を検討したいと思う。