ネガティブな懸念を越えて


先日、小平市の用水について古老の語りをまとめた資料を読んだ。
その中に興味深い話が書かれていたので紹介したいと思う。

小平市に古くから住んでいる方の話だ。
自宅は、江戸時代の新田開発によって、街道沿いに作られた短冊状の区割りを持つ家。

各区割りの敷地内には、玉川上水の分水が流れ、農地と家と屋敷林がある。武蔵野を代表する農家の形だ。

街道沿いには欅(ケヤキ)が植えられ、街道は欅のトンネルだったという。

その欅だが、近隣に住宅が増えるに従って、住民からの苦情が来るようになったそうだ。
「落ち葉が飛んでくるので掃除が大変だ」
「枝が折れて落ちてきそうで危ない」
こういう苦情を言われたり、言われるかもしれないということで立派に育った欅を切ってしまうお家もあるそうだ。

どうやらこういった理由から自然が減っていくこともあるようだ。
危険な枝があるならその枝を切ることは必要かと思うが、落ち葉についてはどうなんだろうかと思う。

苦情を言ってくる人は、後からこの地に住み始めた人であって、元々そこにあった欅の落ち葉に対して苦情を言うのはちょっと違う気がする。
こういうクレーマーがいるのは、本当に残念だ。

元々ある自然を大事にし、落ち葉についても配慮した解決策は出せないのだろうかと切に思う。

例えば、焼き芋イベントを開催し、近隣の人を集めても良いだろう。みんなで落ち葉を集め、焚き火をして焼き芋を参加者全員で分け合ったら一石二鳥だ。その時その欅の事や昔話が聴ければ、新しい住民が町のことを知る良い機会になる。

「焚き火なんてしたら、洗濯物が臭くなる」とか新たに懸念を抱く人がきっといるだろう。でも重要なのは、元いた住民と新たに来た住民とのコミュニケーションだと思う。
きっと顔見知りになれば、少しの事は許せるようになるはずだ。

ところで私は西東京市の小川として田無用水が復活して欲しいと願っている。小平市では、分水口から約1km程は水が流れているがその先は水がない。西東京市内については暗渠もしくは埋もれている。
もし昔のように復元しようと提案するとまず先に挙がる懸念が「蚊が増えるからやめてくれ」だ。

確かにそういう問題はあるかもしれないが、清らかな小川が街に潤いを与え、かつ蚊による不快な思いが少ない解決策をみんなで考えれば良いだけの話である。落ち葉が飛んで来るから木を切れとか、蚊が増えるから水を流すなという短絡的な解決策を求めず、我々はもっとよい解決策を見出せるはずである。

参照
『用水路 昔語り 第一集』 こだいら 水と緑の会