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籾の直播やってみた 2021年4月

2019年より小さいエリアであるが、田んぼを借りて、自然農でのお米づくりを行なっている。

自然農では、苗床で稲の苗を作り、耕していない田んぼに苗を一本づつ手で植えていく方法をとるが、昨年より、籾の直播(つまり種籾を直接播く)の実験も一部行なっている。借りている田んぼの広さは1畝より小さいが、それでも、手で植えていくには1日かかってしまうので、直播によって田植えの労力が減らせないかと考えている。

労力を抜きにした場合、直播のメリットとしては田植えが不要になるため、稲の根が活着するために生じる余計なストレスがなくなることが挙げられる。一方で、直播のデメリットとしては、一般的に、雑草との競合に負けてしまうことである。しかし、ここの田んぼでは、水草がほとんど生えないという特殊な環境なので、水が張られる前に雑草と苗が競合しても、水が張られてしまえば、その雑草は生きていけないので、苗が残ることになる。水が張られるまでの間の雑草の抑制がポイントとなる。

昨年の問題点

苗の生育初期において競合する雑草を抑制するために、昨年は、播く場所の土を鍬で薄く削っておき、そこへ指で1cm程の穴を空け、籾を1粒撒いた。雑草の中に籾を播くと、赤ん坊がの稲が、大人の雑草と生存競争をするようなもので、少なくとも赤ん坊の稲と赤ん坊の雑草との勝負にする事が必要である。

しかし、そもそもであるが、籾の発芽率が悪く、半分が発芽しないという問題が発生してしまった。事前に水選といって、籾を水に入れて沈む籾を選択していたが、それでも発芽率は期待を下回っていた。

今年の解決方法

そこで今回は、昨年の問題を解決すべく、種まきの10日前から、水選した籾を水に浸け、発芽した状態の籾を播くようにした。これであれば発芽しない可能性のある籾を播くことにならないので、苗が育つ可能性が向上するはずだ。さらに念のため、一か所に1粒ではなく、3粒播くようにした。

また、鍬で播く場所を薄く削る作業も負担であったので、播く場所をピンポイントで丸く削るようにした。これには空き缶(フルーツのスチール缶)を使った。缶を土に軽く当て、土の表面を削るエリアを決め、移植ごてで、表面の土を削る方法をとった。しかしながら、土を削る作業負荷としては、大して変わらなかったというのが正直な印象であった。

この作業をしているときに気づいたのだが、籾を播く場所に、冬の間に、稲束を置いておけば、冬から春にかけて生える雑草を抑えることができそうであり、わざわざ、土を薄く削る作業をせずとも、籾を播くことができるかもしれない。この実験については、来年に試してみたいと思う。

播いた籾の種類

今年も、香り米(シフク)、黒米(チベット黒)、赤米(カンニホ)3種類の栽培に挑戦することとした。それぞれの種類について、2~3条づつ直播し、それ以外は苗を植えることにした。

まとめ

籾の直播とは別に、自然農のやり方に沿って苗床も作っている。苗床を作ったのは4月11日。一方、籾を播いたのは、4月17日であったが、発芽しかけた籾を播いているので苗床の苗よりも早い成長を期待している。

田植えの時期は6月上旬から中旬を予定しているが、苗の成長がどのようになるか結果が楽しみである。

微生物燃料電池のDIY(屋外編)〜その1〜

小型冷却ファンを微生物燃料電池で回すプロジェクトを8月まで行ってきたが、約28分間であるがファンを回す事ができた。次のチャレンジとして、田んぼ発電を目標に掲げ、取り組んだ事があるのでリポートしたいと思う。ただ結果として良い結果にはならなかったので、やり方を変えていく必要がある事は始めにお伝えしておく。

構想

先ずはどんな電極構成にすべきか考える必要があった。

東京薬科大学の研究室が行っていた方式では、稲の周囲にドーナツ型のフェルト電極を配置しているようであった。アノード電極は泥の層に浅く埋めて、カソード電極は、発泡材料を使って田んぼの水面に浮くようにする方式だ(方式1)。ただこの方式だとアノード電極とカソード電極間の距離は、水位の変動によって変わってしまう。電極間の距離が大きくなりすぎると、出力が低下するはずである。なので水位変動をコントロールできる田んぼであればそれで問題ないと思うが、私が借りている田んぼのように水位変動が大きい場所では問題になりそうであった。

そこで電極間距離を固定にした構成も検討してみた。カソード電極が水面に浮いた状態で、そこから例えば5cm下へ離した位置にアノード電極をワイヤーでつるすことを考える(方式2)。水位変動を克服できるはずだが、アノード電極が泥中でなく水中に露出する状態になるので、果たして発電菌が電極に付着するのかが懸念事項であった。違うパターンとしては、カソード電極は水底に配置し、その下5cm程離した位置にアノード電極を配置する。つまりアノード電極は土中に埋めることになる(方式3)。これだと、今までに実験にように、アノード電極が土中に埋まるので、発電菌の付着は実績有りとなるが、カソード電極は水底に位置するため、これでは酸素が少ない環境となりカソード電極の位置としては適さないと思われる。

以上のように、いくつかの電極位置の構成を検討したが、まずは方式1で進めてみてからまた考える事にした。

それと、電極の形状についてだが、稲との共存を考えるとドーナツ型を真似るのも良いのだが、ドーナツ状に加工するのが手間であったので、電極は稲の条間に配置できるように細長い長方形を考えた。

電極の準備

電極の素材であるが、今回も以前使用したグラファイトフェルトを使用した。サイズは1平方メートルのものをAliExpressで購入した。1000x1000mmのサイズが送られてくると思ったら、800x1300mmのサイズで送られてきたので少し驚いた。仕様である1平方メートルは満たしているものの予想外のサイズであった。これを4等分にカットし、1枚は200x1300mmとした。

加工

加工は次の2点を行った。

  1.  フェルトの中にステンレス針金を通す
  2.  カソード電極に浮力材を取り付ける

1 であるが、フェルト短辺の中央から1m以上、針金を通すのは結構難しかった。真っ直ぐで曲がらない棒を通すならまだしも、丸まって販売されている針金なので、真っ直ぐに手直ししたつもりでもクセがついていて、なかなか真っ直ぐに通せないのだ。なので、途中針金がフェルトの外に顔を出しては、また中に埋め込んで進めていく波縫いのような見た目になってしまった。それでも、特に電気的な特性には影響無いはずなのでこれでOKとした。

2については、浮力材として、発泡ポリエチレン(水泳で使うビート板の素材)を使った。

40x150x15mm程度にカットしたものを6本用意し、これらをバランスよくフェルトへ固定した。固定方法は上の写真のように、ステンレス針金で固定した。

田んぼへの設置

いよいよ、田んぼへの設置である。新品のグラファイトフェルトは空気を含んでいるためか、浮力が強く水底に沈めても浮かび上がってしまうほどであった。なので、アノード電極を土中に浅く埋めることが、10cm程水深のあったこの時点では難しく、土中に埋めるのは諦め、水底に竹棒で固定し、浮き上がってこないようにした。一方、カソード電極は、浮力材によって水面に浮かすことができた。電極間の距離はこの時点では、水深の10cm程度である。これまでの実験では、電極間距離は5cm程度だったので離れ過ぎているかもしれないが、とりあえず、この状態でしばらく様子をみることとした。

2週間後、想定はしていた事であるがはやくも田んぼの水がなくなっていた。田んぼに入る用水は既に止まっており、8月下旬から9月上旬は晴天続きであったことから、水が蒸発し、田面が露出してしまったのだ。この状態では電極がほぼくっついているようなもので、電池になっていない。失敗であった。

しかも、ザリガニがフェルトや浮力材をボロボロにちぎるというハプニングも発生した。ザリガニの巣穴の上にフェルトが被さっていたため、障害物を除去する行動をとったのだろう。これについては想定外であった。

気を取り直し、電極配置について修正を加えた。ちょうど水が無い状態なので、アノード電極は浅く(約3cm)土中に埋め、カソード電極はその上に置いた。雨が降り水位が上がれば、水面にに浮く想定である。この状態で一週間程様子を見た。

その後、運良く恵みの雨が降り、水位は上昇していた。この時の電池の開放電圧を測定した結果、1つは230mV、もう一つは128Vとなった。今一つの結果となってしまった。

翌週以降も測定したが、開放電圧は上昇することなく、むしろ少しずつ低下しいった。やはり、このやり方ではダメだったようである。

まとめ

始めから想定していたことであるが、水位変動によって電極間距離が変わってしまう問題に加えて、ザリガニが電極や浮力材をちぎるという問題も発生した。この問題を解決しないと先に進めない気もするが、方向性を変えた方が良いのかもしれない。

そもそもであるが、微生物燃料による発電の規模を少し大きくしてみたいというのが目的であったので、田んぼ以外の場所でもよいのである。例えば、湿地だったり、水量の少ない小川なんかは、大雨時などは別として、平常時を考えれば発電に適した場所かもしれない。次は、そういった場所で実施を検討したいと思う。

 

籾の直播をやってみた〜その後〜

先日、稲刈りをしてきた。今年の稲作は、終始コロナ禍であったが、稲の方はつゆ知れず、収穫できるまでに成長してくれた。今年もなんとか自然農で作ったお米を頂く事ができそうだ。

さて今年は、田植えした苗とは別に一部、種籾の直播を試している。直播とは、文字通り、種籾を直接田んぼに播くやり方のことだ。で、田んぼに直播した稲と田植えをした稲の成長ぶりが気になる点であったので、稲の刈り取りの際に、株の分けつ数を見ながら稲刈りを行った。その結果をお伝えしたいと思う。

まずは香り米のシフクと黒米のチベット黒。直播稲では、20数本分けつしている株がいくつも確認できたが、田植え稲では、20本以上の分けつがあまりみられず、およそ10本から15本程度の株が目立った。そして、赤米のカンニホ。直播稲では、20数本の分けつしている株が確認できたが、田植え稲でも同様に分けつをした株がいくつも見られた。その意味で直播稲と田植え稲で大きな差は感じなかった。

以上の結果を踏まえると、結論づけるには、少々いい加減な判断であるが、直播の方が、分けつが多かったという印象だ。

今年の田植えでは、特にカンニホについては、田植え後、まだ根が張る前に、カモられた(カモに苗を倒される事)苗が多く、補植を2回ほど行ったにも関わらず、稲が植っていない空間が残ってしまった。

なので、このカモられる問題を解決する方法として、直播に期待を寄せている。田植えの場合だと、田植えをした後に水が張られるので、根が活着する前に水面を求めてカモが来ると苗が倒れてしまう場合が多かった。しかし、直播では水を張る前に苗がしっかりと根を張ることができるので、水を張った後、カモがやって来ても、苗が倒れにくい状態にすることができるのだ。

加えて、直播のメリットとしては田植えが不要になる事であるが、直播のデメリットとしては、一般的に、雑草との競合に負けてしまうことである。しかし、ここの田んぼでは、水草がほとんど生えないという特殊な環境なので、水が張られる前の雑草と苗が競合しても、水が張られてしまえば、その雑草は生きていけないので、苗が残ることになる。水が張られるまでの間の雑草の抑制がポイントとなる。

今回、ある程度、直播の手ごたえをつかんだので、来年は直播する範囲を増やして実験したいと思う。

最後に、稲刈り時に見つけた、稲穂にくっ付いていた謎の塊について話したいと思う。始めは作業しているときに跳ね上げた泥かと思ったが、同じようなものがいくつも発見できたので、後で調べてみたところ稲麹とよばれる菌の塊であった。稲麹があると収量が減るとかあるようだが、実害はないようなので、特に気にしないことにしよう。

 

籾の直播をやってみた

昨年より田んぼを借りて、自然農でのお米づくりを行なっている。自然農では、苗床で稲の苗を作り、耕していない田んぼに苗を一本づつ手で植えていく。栽培できる範囲は限られるかもしれないが、身一つあればすぐに始められるやり方だ。

私が借りている田んぼの広さは1畝より小さいが、それでも、手で植えていくには2日程度かかってしまう。そこで、この労力がもし減らせるものなら減らしてみたいと思っており、今年は、籾の直播を一部で試しているところだ。

播いた籾の種類

今年は、香り米(シフク)、黒米(チベット黒)、赤米(カンニホ)3種類の栽培に挑戦している。それぞれの種類について、3条づつ直播し、それ以外は苗を植えることにした。

籾の播き方

籾を播いた時期は、苗床を作った時と同じく4月11日であったが、気温が低い日が多かったため、発芽は遅く、5月初めであった。播くのが少し早かったかもしれない。

既に区画の周囲の溝には用水からの水が入っており田面は程よく湿っている状態になっていた。籾を播く場所は、雑草のとの競合を避けるために、15cm程クワで表土を薄く削った。こうする事で、生えている雑草と雑草の種を取り除く効果を期待できる。そこに株間20cmで籾を一粒ずつ播き、軽く土をかけ、最後に藁を薄く被せて、表土を保湿した。

その後の苗(シフク)の様子

5月17日、発芽して約2週間、敷き藁の隙間から稲の幼苗がツンと伸びているのをいくつか確認した。敷き藁のお陰で、稲の周辺の雑草が抑えられているようだ。

5月31日、葉が2枚に成長していた。雑草に紛れているため、発芽率がどのくらいなのかこの時点では不明であったが、籾を播いた箇所全てから芽が出ていないようだった。

6月20日、稲の苗と雑草を見分けながら、注意深く雑草を刈った。この作業は、とても神経を使う難しい作業であるが敷き藁のエリアから生えているかどうかで、ある程度稲と雑草を見分ける事はできる。しかし、敷き藁エリアに生えている稲によく似た雑草(ヒエ)もある訳で、これらは、触った時の硬さ、ヒゲの有無などを頼りに見分けることになる。分かっているつもりでも、時々迷う時もあり、雑草を愛情たっぷりに育てているケースが今後あるかもしれない。

雑草が無くなり見通しが良くなったところでようやく苗の生存率が見えてきた。約5割といったところだ。予想以上に低かった。今思う反省点であるが、5割の生存率であれば、1箇所に2-3粒播いておけば、全ての場所で苗が残ることになる。来年の話になってしまうが、次はそうしたいと思う。やってみないとなかなか気付けなかった課題であった。

直播エリアは発芽しなかった場所が半分くらいあるので、カモが着水するのに絶好の場所となってしまう可能性がある。着水しやすい水面を減らすために補植しておきたいところだったが、直播苗と移植苗の区別しておく管理が煩雑になりそうだったので、補植はせずに替わりにカモ着水除けの棒を挿しておいた。カモられないことを祈るばかりだ。

さて、ちゃんとお米ができるかは収穫時期まで待たなければならないが、籾の直播でもある程度いけるんではないかという感触が少し得られた気がする。今後の成長を見守りたいと思う。

庭の田んぼ池リポート2020年

今年で3年目となる我が家の田んぼ池では、ミナミメダカが元気に泳いでいる。

田んぼ池と勝手に呼んでいるが、プラ舟で作った池の半分を田んぼにしているから、そう呼んでいる。元々は、田んぼと小川の生態系の再現がコンセプトで始めたものだ。実際には小川のように水の流れがある訳ではないが、田んぼと小川の世界観というか日本の原風景を自宅で楽しんでいる。

この田んぼ池では、メダカが卵を産み、稚魚が成長し、また卵を産むといった自然の営み、そして稲穂を収穫し、種籾から作った苗を植え、また収穫したお米を頂くといった米作りの営みが、同時に体験できる。これが、この田んぼ池の最大の特長だ。

稲の種まきから今の状況

1年目、2年目ともに苗床で育てた苗を田んぼ池へ植えていたが、今年は、やり方を変えて、種籾を直接田んぼ池に播いた。この田んぼ池のサイズでは、どっちのやり方でも、大して手間は変わらないが、育てた苗を植える場合は、根が活着するまでに一週間くらいかかるので、活着するための余計なエネルギーがかからない直播の方が成長に有利な気がしている。

播いた種籾は、昨年、実際の田んぼで収穫した古代米(紫黒米)だ。古代米の方が、雑草的な強さを持っていると聞いたことがあるので、古代米を選択した。植えたつもりない場所で、以前の収穫時にこぼれた種籾が、ふさふさと実をつけていた事も、雑草のような強さを持つことを裏付ける。

種籾を播いたのは、4/12。昨年より10日程早く播いた。昨年、早く種まきした人が、良い収量を得たというのを聞いて、今年は自分も早く播こうと思った訳だが、今年は雨が多く気温がなかなか上がらなかったせいか、発芽も生育も遅かった。同じ話を仲間内からも聞いたので、全般的な状況のようであった。そして、5月初旬にようやく芽が出て、今はだいぶ育っている。

ちなみに、冬場に田んぼに水を張る(冬期湛水)ことによって、翌年も古株から稲が発生するという現象のことを昨年知り、とても気になっていたので、古株を田んぼ池の中にそのままにしていたが、さすがに新しい芽が出てくる気配はなかった。必要な条件を今後調べてみたいと思う。

メダカと池の状況

この田んぼ池のメダカはおよそ10匹程度が育っている。1年目も2年目も10匹程度であったが、増えすぎたりすることもなく、このサイズの環境に適した個体数が自然に調整されているような気もする。

池の中にはマツモを入れているが、勝手に増殖してきたのが正体不明の藻だ。池の作った初期の頃は、池の水が緑色になったり、アオミドロのような糸状の藻が優先し、マツモに絡まり、取り除くのも面倒であったが、今は、水も透明で、糸状の藻よりこの薄く面状に広がる藻が優先している。この薄く面状に広がる藻の方が、除去するのも簡単であるので、個人的には、こっちが優先してもらった方が都合が良い。見た目は悪いが、藻なので、池に酸素を提供し、そして、水に溶けた栄養分を吸収してくれる存在だ。見た目重視ですぐに除去するよりは、ある程度成長した後にこの藻を池の外に除去した方が、池の水の富栄養化防止にも繋がると思う。池の富栄養化防止の意味では、稲もその機能を担っている。池の藻や稲は池の水の浄化システムの一部になっているのだ。

今後の成長もまたリポートしたいと思う。

血液のように流れるたんぼの〇〇

先日は、さいたま市丸ヶ崎にある田んぼの排水路の草刈りに参加してきた。

4月中旬には、用水のU字溝の堀さらいがあったが、この日は排水路やその周りに生えた草の草刈りを行なった。排水路の水の流れを良くするのが目的だ。用水の溝はU字溝に整備されていたが、排水の溝は素掘りであり、いい感じの小川となっていた。ただ、水の流れる期間は限られるのが残念なところではある。

先頭を進む部隊は草刈り機で草を刈っていき、後ろの部隊が、ノコガマで、流れの邪魔になるような草を刈って、溝の横にどけて行く作業であった。

 

溝の中を歩いていると、たくさんのザリガニ、カエル、、タニシに出くわした。1匹だけ弱っているフナも見つけたが、他の魚は確認できなかった。近くのザリガニがそのフナをハサミで挟もうとしていたが、私はその場を見守るしかなかった。もし助けたら、フナの恩返しのようなストーリー展開になっていただろうか。

さて、この地域の田んぼでは、用水と排水がそれぞれ分かれているが、水の流れがどうなっているか気になったので整理してみた。

まず、見沼用水(見沼代用水東縁)の水は、基幹の水路を通り、地域の田んぼへと向かう。水は、さらに細い水路(幅20cm程のU字溝)へ枝分かれし、各田んぼの側まで運ばれる。各田んぼに水を入れる場合は、U字溝と田んぼを繋ぐ管が施設されているので、その蓋を開けることになる。

一方、排水は、およそ逆のプロセスを辿る。

各田んぼの側には細い排水路(幅50cm程の素掘り)があり、用水のU字溝より低い構造となっている。排水したい時は、やり方はいくつかあると思うが、田んぼと排水路を仕切る畔に小さい溝を切る。田んぼの水は、排水路を通り、基幹の排水路へと流れる。そして基幹の排水路から最後は、深作川へ注ぐ。

考えてみると、人間の心臓から送り出された血液が動脈から毛細血管を通り各細胞へ送られるのと同じような感じだと思う。

血液が酸素や栄養素を運んで来て、細胞でそれらを利用して、命を維持するためのエネルギーを生産するのと同様に、用水が栄養素を運んで来て、田んぼ(稲)でそれらを利用して、人の命を維持するためのエネルギー(お米)を生産するのだ。

昨今は血液の流れが悪くなることでさまざまな病気を引き起こすと言われているが、用水・排水の流れも同じで、流れを常によくしてあげる必要がある。

そう考えると、用水・排水のメンテナンスはとても重要な作業であると言える。

この作業のおかげで、きっと健康に稲が育ってくれることを祈る。

水路沿い道路の凹みの訳は?

お世話になっている自然農の会がある地域で、用水路の堀さらいがあったので、ボランティアとして参加してきた。

4月の中旬頃、見沼用水から田んぼへ水が引かれようになるので、U字溝に溜まった泥をかき出して、水の流れをよくするのが目的だ。

上の写真が、水路のU字溝で、幅はスコップ一個分だ。水路の長さは、だいたい300m程あって、その日は、7本の水路の泥をかき出す予定であったが、参加者が多かったため、2時間もかからず終了することができた。作業の合間、地元の方とも交流させて頂き、とても有意義な時間であった。その中で興味深いお話を聞けたので共有したいと思う。

先ず上の写真をご覧頂きたい。道路の左には水路、右側には田んぼがあるのだが、道路が少し凹んでいるのがお判りだろうか。

道路は元々平らな道だったというが、地盤が所々で凹んでしまったという。右側の田んぼに張った水が地下を通り、水路の壁面から少しづつ水が漏れていき、この時に、地下の泥も一緒に少しづつ流されていった結果、道路下に空洞ができ、路面が、凹んでしまったそうだ。この水路は、雨水排水と田んぼの排水を目的に周辺地域の住宅開発とともに作られたのだが、水路を深く掘ったことと、水漏れ対策が不十分であったことが原因で、このような事態が起きてしまったのだ。水路沿いの、とある田んぼでは、水漏れが悪化して、1m程の穴が田んぼに空いてしまったり、水漏れが止まらないため作付けをやめてしまっと所もあったという。なんともやるせない気持ちになる。

水路の深さは2m程であるが、水はちょろっと流れているだけだ。なので、平常時は、田んぼの水面との差が2m程あると思われる。もし水路の壁面に亀裂が生じていれば、田んぼと水路の距離も近いので、田んぼの水は、地下を通ってジワジワと水路へ流れていくのはなんとなく想像ができる。

似たような状況として、オランダの小川(溝)のことを思い出す。オランダでは、湿った土地を乾かすために、 周りに溝を掘る事がよく行われている。湿った土の水分は、溝へ移動していくので土地がだんだん乾いていくのだ。雨水排水や田んぼの排水が目的であるが、結果的に、湿った土地を乾かすことと同じことをしているように思えてしまう。

水路への水漏れ対策について役所に相談を持ちかけた事もあるそうだが、予算の都合で思い通りににはいかなかったそうだ。

自分が解決できる問題ではないのだが、仮に水路と田んぼの水面の差が小さくできるのであれば、水の移動は少なくなるかもしれない。下流を堰き止めれば、水路の水位を高められるはずだが、雨水排水機能も同時に維持しないといけないので、話は単純ではないだろう。もしかしたら、両立できる良い塩梅の水位があるのかもしれないが、現状では何とも言えないところだ。

今回、普段はなかなか耳にすることのできないお話を聴かせて頂いた。堀さらいをすると、いよいよ本格的な稲作の始まりを感じるそうだ。今年もおいしいお米ができることを陰ながら記念したいと思う。