地下水は誰のもの?


小川の水源の一つとして湧水があるが、湧水は地下水が地表に湧き出た水である。

地下水の二つの視点

そんな地下水であるが、所有権について最近は二つの視点があるという。

地下水は私水であるという考えと、地下水は共有資源だという考えだ。

これまでは、土地所有権の範囲を定めた法律(民法)に求める考えとして、地下水は私水であるという考えが主流であったようだ。土地所有権に付随する地下水は土地所有者の自由な使用が当然の条理とされていた。

しかし近年、地下水が地球もしくは流域の水循環の一環として流動していることは良く知られてきており、地下水は共有資源であるという考えがでてきている。水循環とは、降雨→地下へ浸透→地下で流動→地表へ流出→蒸発→降雨→…である。

昭和41年の松山地裁の判決でも、地下水は「流動する性質」を持つため「共有資源」であるとし、利益(損益)の公平かつ妥当な分配の原則を適用したという。

近隣の土地で、地下水が大量に汲み上げられた結果、自分の敷地の井戸から採取する地下水が少なくなってしまうのは道理に合わないと思う。

現時点で、地下水の所有権について明確に規定したルールは確立していないが、地下水が共有資源であるという考え方は、今後主流の考えになっていくだろうと思う。

井戸水を使用する場合は、自戒を込めて、共有資源であることを理解した上で妥当な使用を心掛けたいものだ。

おまけ

流動するものと言えば、大気も流動している。

そういえば、大気中の水蒸気を集めて水をつくるプロジェクト(WARKA WATER)の話を思い出した。飲み水が得られない乾燥地域において画期的なプロジェクトだ。

今のところ、この装置で水を作っても、大量に作れるわけではないので、周辺の人達から、「そっちで水作り過ぎだぞ!」とクレームを受けることはないと思うが、この装置が進化したときは、大気の水蒸気も共有資源として考えられる時代がくるかもしれない。

 

参考
「育水のすすめ 地下水の利用と保全」 GUPI共生型地下水技術活用研究会 著 西垣 誠・瀬古 一郎・中村 裕昭 編著